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イングロリアス・バスターズのakrutmのレビュー・感想・評価

3.7
ドイツ占領下のフランスを舞台に、家族を皆殺しにしたナチスへの復讐を試みる映画館館主の女性や、ナチスの兵士を次々と残忍な手口で殺害していくアメリカ特殊部隊と、ユダヤ・ハンターの異名を持つナチス将校との戦いを描いた、クエンティン・タランティーノ監督の戦争ドラマ映画。

シンプルだけど映画愛に満ちたストーリー、殺害シーンなどの派手な娯楽的演出、そして俳優たちの演技と、鑑賞者を飽きさせない良質の娯楽映画に仕上げているのは、さすがタランティーノ監督というところだろう。個人的にはこういう過剰な演出はあまり好きではない(特に、大げさすぎる劇伴が興ざめだった)し、途中(特に4章が)が間延びしていることもあって、☆4以上の高評価とは言えないが、まずまず楽しむことができた。フィルムマニアのタランティーノ監督が気に入っているという、映画を武器にナチスに復讐するというプロットは好き。

でも、ユダヤ・ハンターの異名を持つハンス・ランダ大佐が最後に行った意思決定は、本作の致命的な失敗だと思う。あんなに賢く冷静な人物が絶対にあんな行動はしないだろう。その行動の裏がさらにあると思って見ていただけに、最後の終わり方は本当にがっかりだった。

一方で、この映画を見たほとんどの人がそう思うように、ハンス・ランダ大佐を演じたクリストフ・ヴァルツの冷徹な演技はとにかく素晴らしいの一言に尽きる。カンヌ国際映画祭やアカデミー賞で男優賞を受賞したのも当然であろう。でも、クリストフ・ヴァルツという俳優を知らなかった(タランティーノ作品はほとんど見ていない)ので、最初のほうはティム・ロスだとばかり思っていた。

メラニー・ロランは良かったけれど、表情がいまいち。ブラッド・ピットは相変わらず単調な演技しかできないけど、存在感は抜群。フランス映画への出演が多いダイアン・クルーガーがドイツ人だったことを再認識した。レア・セドゥが最初のシーンでちょこっと出ている。『美しいひと』で注目されたばかりの頃ではあるが、こんな扱いなのかあ。
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