このレビューはネタバレを含みます
180分あるのに退屈する隙がない。静かなシーンにもずっと殺気がある。
犬飼が八重を殺してしまったのは、犯罪の露見を恐れたからではなく、八重の奥に恐ろしい貧困の面影を感じてしまうからじゃないか。犬飼は八重と初めて会った時も、ほとんど発作のように首を締めていた。恐ろしい貧困の面影は、それを味わった人間にしか解らない。刑事の弓坂もそれが理解できる一人だった。この三角関係が切ない。三人はそれぞれ直向きに生き、優しい人間だった。
粗い白黒。若くて張りがありすぎる高倉健。怖すぎるイタコのシーン。ラストは、海峡に飛び込む犬飼と、それを呆然と見つめる刑事たち。