一人旅

ナンニ・モレッティのエイプリルの一人旅のレビュー・感想・評価

3.0
ナンニ・モレッティ監督作。

イタリアの奇才ナンニ・モレッティが製作・監督・脚本・主演の一人四役をこなしたコメディで、様々な事柄に翻弄される男の日常を描きます。

ベルルスコーニが選挙で当選した1990年代のイタリアを舞台にした作品です。モレッティ扮する映画監督の主人公が、右派・左派で揺れるイタリア国内の政情や、最愛の妻の妊娠&出産&子育て、政治ドキュメンタリー映画の制作など様々な事柄で頭がいっぱいになり勝手にてんやわんやしてしまうという風変わりな日常喜劇です。散文的なライトな作劇がいかにもモレッティらしい自由さで、彼がスクーターでローマの市街地を駆けるシーンは『親愛なる日記』(1993)のセルフオマージュともなっています。

自分の周囲で起こる様々な事象に囚われ、自分が本当にやりたいことができなくなってしまう現代人をモレッティ自身が象徴して見せてくれる風刺喜劇で、キャスリン・ビグローの『ストレンジ・デイズ』(1995)が胎児に悪影響を与えるというモレッティの偏見に満ちた見解など劇中散りばめられた映画ネタもクスッと笑える小品です。
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