xyz

リミッツ・オブ・コントロールのxyzのレビュー・感想・評価

4.5
〈宇宙は中央もなく端もない〉
ビッグバンで宇宙が起こり、高速で膨張して今も膨張し続けている。その動きがいつかは反転して縮小に向かい、やがて無になる。無になったとたんにビッグバンが起こり、また膨張する。この無限ループが宇宙であって時間だ。
一方、宇宙には中央もなく端もない。
膨張するのに端がないというのは一見矛盾しているが、時間も空間もループしているからだ。ループしているから始まりも終わりもなく、中央も端もなく膨張し縮小する。
リーダーを持たない集合体のようだし、合わせ鏡の無限の様でもある。
空間と時間があるだけ。




この映画は、美術と映画と科学と音楽の世界で生きている人間の、社会を支配しているシステムへのアンチテーゼだ。
ジャームッシュの映画に対する考え、科学に対する考え、ギターに対する考え etcが詰まっている。
そして、「紙」を食って想像力を蓄えた男が社会システムの象徴である「アメリカ人」を殺す。
これはジャームッシュの社会を支配するシステムへのアティチュードそのものだ。
芸術と科学が想像し創造する世界が本当の世界なのだと。そこには限界も抑制もないのだと。





なぜ映画が好きなのか、なぜ映画を観るのか考えたことがなかったが、この映画を観て分かった。
人生は意味があるように思えて実際には意味が無いが、映画は意味が無いように思えても意味がある。だから私は映画を観るのだ。


”LA VIDA NO VALE NADA”

Nothing is truth.
Everything is imagine.


美しい色合いと構図、中毒性のある音楽、想像するための映画。
xyz

xyz