コマミー

アングスト/不安のコマミーのレビュー・感想・評価

アングスト/不安(1983年製作の映画)
3.5
【不安と焦り】


「羊たちの沈黙」、「ミザリー」…「ハウス・ジャック・ビルト」、「ジョーカー」…、ここに至るまで様々な"狂人映画"の傑作が生まれてきた。
人を殺すのを、[営み]として殺す者や、[芸術]として殺す者もいた。そこにはいつも、その殺人鬼の目や心は、"快楽"が詰まっていた。

だが、これらの殺人鬼のケースには大概、なんと"実在の人物"などが絡んでくる。一緒にして良いのか分からないが、あの「IT」のペニー・ワイズだって、実在の殺人鬼を基に、作り出したキャラクターだ。世界には様々な、狂った奴等が身を潜めている。

だが、その作品の中には、あまりにも狂おしい内容の為、"お蔵入り"になった作品もある。

その一つが、この「アングスト 不安」だ。

最近の作品ではなく、今から37年も前のオーストリアの作品だ。タイトルも全く違う名前で公開されている。しばらく忘れ去られ、お蔵入り状態であったわけだが、その詳細が分からないため、その理由は謎のままだ。
"ヴェルナー・クニーセク"という"実在のシリアルキラー"を描いている作品なのだという。幼い頃から"生き物を痛め付ける異常な性癖"をもっており、青年期には自分に「家を出ていけ」と迫った母親を殺し、金銭を奪いドイツに逃げた。
その後ドイツのハンブルクで逮捕され、オーストリアに強制送還されたのち、2年間少年院に服役する。そして2年後、ここから、冒頭のシーンに繋がる。

当時では恐らく貴重な"固定カメラの撮影法"を使っていて、主人公の表情を間近で直視する手法が観るものの、"不安を誘っている"。
"息づかい"やダラダラ流れる汗、ターゲットを追いかけるときの眼球が飛び出るほどに見開いた目…、出演者の狂演が間近で確認できるのが良かった。

先程息づかいとあったのだが、とにかく主人公の表情や動作が"リアル"なのだ。そして劇中に流れる彼の"心の中の声"のようなナレーションが、さらに不安を掻き立てる。殺しを楽しんでる、狂人そのものだった。

ちょくちょくシックリ来ないシーンもあったが、屋敷でのシーンは充分に不安を感じとることが出来た。

貴重な作品を見せてくれたことに、感謝します。
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