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沙羅双樹(しゃらそうじゅ)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

3.0
【祭のパワーは大雨をもたらす】
TSUTAYA浅草店の在庫一掃セールで河瀨直美の『沙羅双樹』をゲットした。彼女の作品との相性は最悪なのだが、カイエ・デュ・シネマのベストに選出された作品でもあるので観てみた。彼女の作品の中では一番観やすかった。

この時代の河瀨直美作品は録音が酷く、字幕がないと聞き取れないほどである。相変わらずスピリチュアルな内容で、美しく感傷的な画の中で神隠しに遭ってしまう子ども、青春、祭が映し出される。前半こそあまり惹かれるものはなかったのだが、終盤にダンサーが練り歩く祭の場面がある。これがパワフルであった。祭とは集団が一つの方向に向くことで独特なエネルギーが生まれる。それを映画的に落とし込むと大雨が降る。大雨は不快な象徴だろう。しかし同時に、全てを洗い流す象徴でもある。人々のエネルギーが大雨の不快さを吹き飛ばして、カタルシスに繋げていく。この運動に感動してしまった。今だと、新海誠監督が得意とする演出だが、この時代は河瀨直美がそれをやってのけたといえよう。
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