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ウラジミールとローザのTakayukiMonjiのレビュー・感想・評価

ウラジミールとローザ(1970年製作の映画)
3.7
ゴダールマラソン。ジガ・ヴェルトフ集団名義での監督作で、ゴランとの共作。
シカゴセブン事件にインスパイアされて制作した裁判劇。被告たちの日常生活を見せつつ、女性蔑視と人種差別のメッセージが多く、実際の事件を踏まえて、反米および反ブルジョワ的資本主義を徹底批判した内容。
裁判劇は茶番のようなブラックユーモアに溢れた演出をすることで、とてもシニカルな笑いの政治メッセージになっている。裁判長がひたすら”プレイボーイのピンナップ”に何かを書き連ねていくシーンが印象的。
また、ロックの音楽もブツ切りで挿入される。

ブルジョワ的象徴でもあるテニスのtennis courtと裁判のcourtをかけてるのか、コート上でゴダールとゴランのやり取りがある。
“ジークハイル”というナチス的な挨拶と、”イスラエル(イズライル)”と韻踏したり。
若い革命家の男の頭を抑え、背後にぴったりと付いた女が口パクで、女性蔑視に対するメッセージを発するシーン。

前作の「イタリアにおける闘争」でも取り上げられた”黒い画面”を引用し、黒人役として出てくるボビーの不在、CBCから買えなかった映像の代替、ブルジョワ的資本主義とは違う革命者の勝利の色を反映させているという主張。
警察はブルジョワの歩兵、ブルジョワと大金持ちの番人である。帝国主義の走狗。
階級差別をなくす、ある集団だけの特権をなくす。経営者の搾取をなくす。

ジガ・ヴェルトフ集団の総括的な内容。現代社会に起きていることとも普遍的に通ずるものがあり、歴史は繰り返されていくのか。
ゴダール的手法としては、問いと非応答のやり取り、ぶつ切りの音使い、映像コラージュ、音と映像のずれのあるミキシング、明らかに作りものの血糊、などなどゴダール的な見所は多い作品だった。
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