LEONkei

東京のえくぼのLEONkeiのレビュー・感想・評価

東京のえくぼ(1952年製作の映画)
3.0
本日で2022年の最後のレビューとなります。皆さま本年も誠に有難うございました。
映画の中身云々と言うより自らの過去から養われた感性と人生観を照らし合わせた、単なる戯言を綴るだけのレビューでしたがまた来年も宜しくお願い致します。


伝統ある紀ノ国屋グループの会長で紀ノ国屋物産の社長でもある世間知らずの裕福な男〝上原謙〟と、多数の応募の中から難関を突破し採用され社長秘書に配属された低階層の貧しい新人社員〝丹阿弥谷津子〟のコメディタッチの人間ドラマ。

戦争によって全てを失い戦後復興を不眠不休で馬車馬の様に急速に発展する日本経済界は、『モダンタイムズ』とは時代背景も状況も違うが企業や社会の底無し沼にハマる社長〝上原謙〟がチャップリンに見える。

社長と言えども会社組織の歯車のひとつでしかなく会食やら冠婚葬祭やらの繰り返し、中身も分からず機械のようにハンコをトントン押し続ける日々が続く虚無感。

本当にやりたかった事は何なのか?
ハンコを押す事では無いのは分かっている。

そんな苦悩する社長に新人秘書が忘れかけていた生きる事の本質、大都会東京の泥沼から細やかな優しい〝えくぼ〟で灯火を与える。

身分の違う男女を描いた『王様と私』や『ローマの休日』のようにも通ずる関係性、「自分が一番やりたかった事は本当に今やっている事なのか?」人生で何が大切かシンプルに気づかせてくれる。

異なる立場や環境を起点に人間の生きる本質的なものを描いているが、描き方はコミカルで適材適所な俳優陣が飽きさせずに楽しく観させてくれる。

脇役ながら節目節目で登場する〝小林桂樹〟と〝高峰秀子〟コンビを贅沢に使い、柳家金語楼や古川ロッパや伴淳なども素晴らしい個性を発揮する。

悪しき慣習は改めなくてはならないが、古い慣習の全てが決して悪い訳ではない。

何でもかんでも欧米諸国に意味も分からず根拠も理解せず合わせていたら、日本独自の優れた習慣や美や食を失い日本が日本で無くなってしまう。

異なることを恐るべからず。

もっと世の中を俯瞰し日本人である事の素晴らしさに誇りを持ってほしい..★,
LEONkei

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