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シェラ・デ・コブレの幽霊の消費者のレビュー・感想・評価

シェラ・デ・コブレの幽霊(1964年製作の映画)
3.9
初回鑑賞: 2022/12/31
初回スコア: 3.5

・ジャンル
ミステリーホラー/スリラー/サスペンス

・あらすじ
本業である建築家業の傍ら心霊調査員として活動するネルソンの元に舞い込んだ依頼
それは富豪一族マンドール家最後の跡取りである盲目の男性ヘンリーによる物だった
妻であるヴィヴィアによれば彼は近頃、1年前に亡くなり納骨堂に眠っているはずの母ルイーズと思しき女性から度々電話が掛かってくるのだという
マンドール家の邸宅と直通の棺と隣り合って設置された電話、亡き母以外は知らぬはずの番号…
そしてとうとう霊を信じていないヴィヴィアの前に血まみれの顔をしたそれが現れてしまう
謎が深まる中、起こり続ける怪奇現象
ネルソンはその裏で暗躍するマンドール家の家政婦パウリナに怪しい何かを感じ始めるが…

・感想
映像のあまりの恐ろしさから上映中止になったという逸話で知られるモノクロ時代のクラシックホラー/ミステリー
初鑑賞時はあまり良さが分からなかったのでリベンジとして鑑賞

改めて観てみるとあらゆる面で良く出来た作品で驚かされた
本作の象徴とも言うべき色を反転させた血だらけの顔という霊のビジュアルは勿論のこと何よりストーリーの構築が巧い
恐怖演出を除けばしばらくはホラーというよりミステリー要素の方が目立つが終盤からの真相に繋がる怒涛の展開がしっかりとそれまでの伏線と繋がりあっていて綺麗に着地する様はとにかく印象的

王道を行けば日本で言うところの火サス的な哀しい美談として落とす事も出来たであろう物語をそこで終わらせず更に捻りを加える事で霊を題材としつつ人間のおぞましさで落とし心霊調査員ネルソンの十把一絡げに何でも霊に繋げるのではなく疑う所から入る姿勢と絡み合わせる
それでいてそこには霊がしっかりと絡み、ヘンリーの母とシェラ・デ・コブレ教会で命を落としたアメリカ人教師という2人だけで締めない点も秀逸

また全編通して印象的な画が多く、Wikipediaによれば随所に対比を仕込んでいるとの事だがそれもまた作品に深みを与えていた様に思う
オカルトと現実主義、母と子、愛憎と独占欲…
こういったドラマ性の部分が土台としてあるからこそ悲哀や狂気、恐怖という作品のもたらす感情がより重厚に感じさせられる

所謂クラシックホラーは往々にしてサスペンスやミステリーの毛色が強い
対して本作はそれに甘んじる事なくホラーという物と真摯に向き合っていてその点も好印象

多くの作品を見漁り続けてきてこそ分かる良さという物が確かにあるという事を改めて感じさせられる良い映画体験だった
今後も様々な作品をリベンジ鑑賞していきたい
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