Eike

エルフ 〜サンタの国からやってきた〜のEikeのレビュー・感想・評価

3.8
2003年の全米大ヒット作ですが結局、日本では未公開の一本になってしまいましたね。
アメリカ製コメディ映画にとっては不遇な時代が続いているのかな。

未公開に終わりはしましたが、本作は中々に興味深い一本であります。
まずTVで活躍していたウィル・ファレルにとって初の主演映画であったこと。
本作の大ヒットにより、一躍トップコメディアンの仲間入り。
コメディアンは精神的に「瞬発力」が要求されることもあって消耗が激しく、その勢いを維持することは容易で無い気がします。
そんな中でファレル氏は今でも立派に一線級の活躍を続けておられるわけで実力を感じます。

もう一つは本作で監督のジョン・ファブローは初のメジャースタジオ製作の演出を任された点。
80年代半ばから主にインディーズ系の作品で役者としてキャリアを積んでいたファブロー氏ですが、本作のヒットで一気に注目を集めました。
そして5年後に新興であるMarvelスタジオの第一弾”Iron Man"を任された訳です。その後の躍進ぶりはご存知の通りです。
本作を見て感じるのは「基本に忠実で物語を突き放さないアプローチ」。
突飛なお話であっても主人公をちゃんと血の通ったキャラクターとして描く意識は揺るがず、それもあって一本の作品としてちゃんと魅力が生まれております。
この姿勢は「アイアンマン」でも同様であった訳で今やファブロー氏はディズニー映画に加えてスターウォーズの展開においてもかじ取り任されるとも噂されております。

さて、そんな本作ですがエルフ(サンタさんの助手の妖精ですね)として育てられた赤ちゃんが大人になって実のパパに会うべくニューヨークにやって来るという「ファンタジー」です。
しか〜し!見所はとにかく冴えない風貌の中年のコメディアン、ウィル・ファレルの成りきりエルフの演技に尽きます。

一応子供向けのクリスマスファンタジーですからギャグも下ネタは抑え目で最低限の品位を保っているのですが、かなり笑いましたね、私は。
個人的には甘いもの好きのエルフ式食事(なんにでもとりあえずメープルシロップをかける)とビルの回転扉で遊ぶシーンが好きかな。

でもこの映画がクリスマス映画の定番となった理由は只のギャグ映画では収まらずちゃんとほのぼのファンタジーとしても成功している所。
クライマックスにはちゃんとクリスマステーマの定番:信じることの大切さが描かれていて盛り上げてくれるのが嬉しい。

主人公バディを演じるファレル氏の吹っ切れたパフォーマンスを補強するためにパパ役には重鎮ジェームズ・カーンやメアリー・S・バーゲンと言った演技派が脇を固めている辺りは中々に練られたアプローチと言う気がします。
ヒロイン役はブレイク前のズーイ・デシャネルだった訳で、これも先物買いとしていい選択眼と言う気がしました。
おまけとも言えるクレイアニメーションの動物達も可愛いし。コメディ好きな方だけでなく「可愛い」もの好きな方にもおススメ。

大ヒット作ですから当然続編の話も出たそうでファブロー監督も乗り気だったそうなのですがウィル・ファレル氏にとってはここまでキャラを作りこんでコメディ演技に全振りするのはかなり精神的に大変だったらしく
高額ギャラ(約30億円)を提示されても首を縦に振らなかったそうです。
Eike

Eike