両親が亡くなってハンガリーに戻ってきた少女ユリが、共産党員の養母に抗いながらも好きな映画に接する日々を通じて独り立ちしていく様子を描いた、マールタ・メーサーロッシュ監督の自伝的映画。メーサーロッシュ監督の自伝的映画である「日記」四部作のうちの第一作目であり、1984年のカンヌ国際映画祭でグランプリ(当時は「審査員特別グランプリ」と呼ばれていた)を受賞している。
まさにマールタ・メーサーロッシュ監督が少女時代に経験した事柄を映画化したような作品で、ソ連での粛清によって父親を殺された主人公のユリは、次第にソ連寄りになっていくハンガリー共産党の忠実な党員である叔母マグダを毛嫌いしている。そんな中で、映画館に頻繁に通って映画に没頭しながら、自立した女性として生きていくことを夢見て成長していく姿が印象的に描かれている。第二次世界大戦直後のハンガリーが舞台なので、その頃の状況を知らない(私もよくは知らない)と細かい部分まで理解できていないのかもしれないが、ノスタルジックなモノクロ映像と美しい音楽とともに描かれる、力強く生きていこうとするユリの姿、そしてユリを演じる Zsuzsa Czinkóczi(何と読むかがわからない…)の演技は素晴らしい。
ちなみに彼女は「日記」四部作すべてでユリを演じているようである。次作では映画を学ぶために渡ったソ連でのユリが描かれるとのこと。MUBIで三作目まで公開されていたけれど、最近時間が全然取れないこともあって、本作で力尽きた。第二作以降は日本で未公開のようだっただけに、無念。