平安時代モノの時代劇なんて中々レアなジャンルだと思うけど、この作品の4年前には『羅生門』もあったりして、たまたまだったのか、あえてなのか。
川のシーンは噂通り、静けさと美しさが一際立つ。何十年経っても父親の教えを受け継いで信念を曲げないのは、厨子王ではなく安寿だったというところは溝口さんならではの切り口。
額への焼印とかアキレス腱を切られる時の叫び声が、もちろんそんなのは聴いた事ないけど、リアルだなという叫び方だった。リアルといえば、厨子王達の召使が船から落とされるシーンも自然だった。そういう演出の一つ一つが磨かれてるし、画面の構図もバッチリなので、これが映画の芸術なんだと思わされる作品だった。