山椒大夫の作品情報・感想・評価

「山椒大夫」に投稿された感想・評価

私は森鷗外さんの小説が先ですので、安寿さんが妹であることに違和感がありました。私に姉がいるので厨子王さんに自分を投影してましたが、今回はそういきません。それで、今回は寄進地系荘園の恐ろしさを知りましたね。惣村による自治が待たれますよ、ほんと。
しょっぱく ピリ辛(※1) 泣かす旅(※2)に出るよ
巡り巡り(※3) 今夜(※4)さ 今は気付けない君の見所
だからチャームポイント全部調査(※5)したい
All right(※6)
Zuidou

Zuidouの感想・評価

4.4
のっけから森の中を行脚しているところからして「移動」の映画だと思った。というかもしかして映画とか物語ってものの核になるのは「移動」なのか。物理的な移動、地位の移動、気高さから卑しさへの移動、年月の移動、と見ようによっては全てが移動だったように思えてくる。更に推し進めて考えていくと人の一生とは即ち移動なのでは・・・とまで考えてしまったのはこの映画が扱う物がそれだけ根源的であったということなのかも。若き日の香川京子さんの輝きたるや。若さから老いへ、それもまた移動か。
「閉域」という主題 
中世の奴隷空間からの脱出を描き、人間の尊厳を問い直す。ネオリアリズム的溝口の演出はもちろんのこと、徹底した俯瞰のロングショットによる斜面を下る運動の積み重ねによって脱出を下降の運動に集約する手法も感動的で、カイエデュシネマの批評家たちが称賛するものをスクリーンで目撃できたことが喜ばしい。

安寿の死へと向かうシーンの水の静寂が忘れられない。
本日5月16日は世界に誇る巨匠・溝口健二監督の生誕120周年に当たります!

溝口の代表作の一つ『山椒大夫』は、安寿と厨子王の伝説として日本古来から親しまれる説教節『さんせう太夫』をベースに、文豪・森鴎外が編纂した小説を更に映画化したもの。

不条理にも貴人から下人へと身を落とした厨子王が悲劇の末に復讐を果たすという因果応報の原典とは多少異なり、
散々になった家族の絆が全面に押し出された鴎外版は一層感動的に仕上げられています。
そこに溝口の映像美と徹底したリアリズムが添加された本作は、日本屈指の名画として今なお鮮烈な感動を呼び起こしてくれるのです。

溝口はヌーヴェルヴァーグの精鋭たちに多大な影響を与えただけでなく、
寡作の巨匠ビクトル・エリセ監督に至っては本作をきっかけに映画監督を志したほど!

ここで描かれる主人公の父親は、虐げられ困窮した民衆のために謀反を働いた逆賊の官吏。
この設定は森鴎外の創作ですが、その人物像は陽明学者・大塩平八郎に起因するところが大きいと思います。

大塩平八郎は江戸幕府の役人でありながら、官僚体制の腐敗ならびに飢饉に苦しむ庶民を尻目に私腹を肥やす豪商に対し、天誅を下すべく「大塩の乱」を起こした慈悲の偉人であり、
実際に森鴎外は『山椒大夫』を発表する前年の1914年に小説『大塩平八郎』を執筆しています。

元々鴎外も官吏の経歴がありますが、1910年代には「大義・忠誠」についての作品を多く執筆しており、それは当時第一次世界大戦の渦中に課せられた、彼なりの課題のようにも思えます。

また過酷な奴隷的労働環境を是正する描写も鴎外の創作なわけですが、ある種の社会民主主義的思想をも匂わせるこの部分には、現在の労働基準法の元に当たる工場法~労働者保護法が1911年に公布され、後の1916年に制定されることになる世相が影響していると云えます。

そして溝口が描いた本作『山椒大夫』には、戦後の日本が目の当たりにした貧困と不条理な混乱が更に投影されています。
戦争で散々になった家族、人身売買、特権者の横暴、そして華族制度も廃止され、等しく貧しい全国民が本格的に平等を手にし再びゼロから生きようとする希望。

また『西鶴一代女』に込められた階級闘争だったり、『雨月物語』の封建制度における身分だったり、『祇園囃子』で描かれた基本的人権だったりと、歴作のテーマがしっかり活かされているのもポイント。

宮川一夫の天才的キャメラが冴え渡り、日本の美しさを誰よりも巧みに切り取った名匠溝口健二の超傑作です。
堂ノ本

堂ノ本の感想・評価

4.0
やや長い。

冒頭親子が引き離されるところが良い。奥に見える水平線が残酷で、そこにどんどん離れていく舟がロングで捉えられる。舟の上から落とされる召使は無残にも溺れ死ぬ。

火の伝染、転倒、水辺。
hagy

hagyの感想・評価

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日本人のサガ、考え方を興味深く読み取れる映画ではないでしょうか、
かつて教えとして受け継がれていたものも、今じゃ神話と化しております、
そんなものを目の前で淡々と流され、どう受け入れるべきかわかりませんし、さらに正当な評価などできるものでしょうか、、

映画の前に小説を読みましたが、2,3ページでつい手を止めました、
あまりの素晴らしさに感動してしまったのです、、、
溝口健二監督の壮大なる平安絵巻であった。

安寿と厨子王の物語を軸にした物語であるが、人物配置・風景描写などに練りぬかれた感のある映像表現に感服した。 

特に印象的だったのは、波のように揺れるススキ野原の風景など。 

傑作。
CK3

CK3の感想・評価

3.9
名作、30年ぶりだろうか再見

計算され尽くした構図と宮沢一夫の巧みなカメラワークがもたらす映像演出は素晴らしい
佐渡の美しい海の情景がモノクロなのに色鮮やかと思ってしまうほど
安寿が入水するシーンがその水面の波紋までも神秘的で悲しく、涙をそそる。
今から約50年以上も前の映画ではあるが、時間を費やし撮影した本物の情景は時代を経ても色褪せない
ゴダールの名作を見たせいか、彼が最も敬愛する日本人監督である溝口健二の作品がふと見たくなった。

原作の安寿と厨子王丸でも小説の山椒大夫でも姉弟の関係なのに何故この作品だけ兄妹になっているのか、香川京子の年齢に合わせたにしても弟と通用する市川雷蔵とか長門裕之とかの役者はどうしても持って来られなかったとか、と考えたらその点は未だに惜しいと思えるけど、作品自体は雨月物語に続く宮川一夫の起用もあり映像が頗る美しくて素晴らしい。

途中結構胸糞悪い展開が続くから頻繁に見たくなる映画でもないけど、優美な自然の風景の数々が鮮烈に記憶に残って時折鑑賞欲求が湧き上がるから困る。
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