のわ

神様のパズルののわのレビュー・感想・評価

神様のパズル(2008年製作の映画)
3.3
“映画”という宇宙が生まれる瞬間。

裏と表のような相反するものという話が出てくるが、 この映画自体が正に多くのそれで構成されている。
“動”の市原隼人がいて、“静”の谷村美月がいて、 2人の素晴らしい芝居が重なり合った妙が生まれる。
物理学という理屈の塊と三池崇史という感覚の塊がぶつかり、 そこにいびつなまでの勢いが生まれる。SFな建造物の眼下に広がる田んぼ。 くそ真面目なクライマックスに、整合性もくそもないマイクスタンド。 ロックな第九。 大嵐の生死の狭間で、寿司。 けっこう真面目なシーンなのに、走り寄るのは小島よしお。
いろんな相反するものがぶつかり合ってスパイラルになって、 絶妙な可能性の中で、素晴らしき“映画”という名の宇宙が創り出させる。

ここがイイ、あそこがイイ、ではなく、 全部ひっくるめたバランスの偶然のような創造。
正直、ストーリーとかだけ見ちゃう人はツライと思う。 そういう人は三谷幸喜とかのがイイのかな、と。
でも、できればなるべく多くの人に、観てもらいたい。 この荒唐無稽な宇宙を。
感じてほしい。 このコトバで表せない世界の誕生を。

あの展開、あの状況、あの撮り方の中で、 あんな風に唄う市原隼人、その突き抜けたカッコよさ。
あの瞬間、そこに宇宙は生まれていた。

間違いなく、全てのパズルのピースが揃っていた。
こういう事こそが、“映画”なんだと思う。

それだけでもう、この映画に意味はあったと思う。
のわ

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