はなればなれのマチルダ

コントラクト・キラーのはなればなれのマチルダのレビュー・感想・評価

コントラクト・キラー(1990年製作の映画)
4.8
『I HIRED A CONTRACT KILLER』という原題となっている本作はタイトル通り、リストラされたジャン=ピエール・レオーが殺し屋に自分の殺害依頼をするものの、愛する女性に出逢い自殺願望が消え去る。しかしコントラクトは生きているため、殺し屋に追われる中で…
というお話です。

私はこの作品を観て、やはり映画作家とは苦しみに揉まれている生き物だな、そう強く思いました。個人的な話にはなりますが、先天的な厭世観に苛まれながら21年間生き続けてきた私は、深淵を見たように感じる時期も幾度となく経験してきました。無論その中に浮き沈みがある訳で、昨年下半期がその極北に、今がちょうど南端とまでは言いませんが落ち着いた心持ちの時期にあります。

このコントラストを直近的に経験した私にとって、本作『コントラクト・キラー』を世に放り込んだ当時のカウリスマキの心情を、悲しみをもって抱きしめたく思いました。
ただ一つだけ、生きがいを持ってして生を保持している様子が私には感じられます。幸福の裏側に悲しみがあり、その先には怒りがあります。そう言った感情がこの作品を形作り、彼自身の生命を形作っているのかもしれません。

芸術家は孤独であるから孤高であるのでしょう。彼らの孤独を、私たちは多大なる愛を持って受け止めなくてはならない、そう強く思います。