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地球最後の男のYSKのレビュー・感想・評価

地球最後の男(1964年製作の映画)
3.7
起承転結の起から転までは、日の光とニンニクが嫌いで鏡に映らない、そんな吸血鬼化してしまうウイルスが蔓延してしまった世界で生きるただ一人の人間の日常をただただ淡々と描いているだけなのになぜか目が離せない魅力がありました
日中は自分が生きるための食糧の確保や吸血鬼の心臓に杭を打ち込み、夜は自分の命を狙う吸血鬼との接触を避け自宅にこもって在りし日の家族の思い出にふけるだけの生活、果たしてどれだけの孤独に苛まれ耐えられるでしょうね、そこまでして生きる価値があの世界にあったのでしょうか
日が暮れたのちにどこからともなく現れて、主人公の名を呼びながら家の周囲を徘徊する吸血鬼たちのシーンや、外でうっかり寝過ごしてしまった主人公が吸血鬼に囲まれながらもばったばったとなぎ倒し車に辿りつき自宅への道を急ぐシーンは滑稽ではあるものの、とても深い悲しみに包まれていたように思います

そして終盤、ある女性に出会ってしまった主人公、こんな皮肉のきいたバッドエンディングはないですよ本当

謎のウイルスによるパンデミックといった、なんとなく今のご時世にリンクしている部分もありつつも、とても56年も前の作品とは思えない完成度でした、すごい
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