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娼婦ケティの一人旅のレビュー・感想・評価

娼婦ケティ(1976年製作の映画)
4.0
ポール・ヴァーホーヴェン監督作。

オランダに生まれ、ベルギーやフランスで活動後、1942年に84歳でこの世を去った女性作家:ネール・ドフの回想録を基に、オランダの鬼才:ポール・ヴァーホーヴェンがアメリカに渡る前のオランダ時代に手掛けた人間ドラマの佳作です。

19世紀後半のオランダを舞台に、職を求めて地方からアムステルダムに移り住んだ若い娘:ケイティとその家族の姿を描いたドラマ映画で、娼婦となって家族を経済的に支える存在となったケイティの波乱の生き様を、絵画モデルになったことをきっかけに出会った資産家の男性との情愛のゆくえを軸に描き出した“欧州歴史+女性映画”となっています。

実在の人物であるネール・ドフの実体験を基に、下層階級出身の娘が厳しい現実に揉まれながら逞しく生き抜いていく様子を描いた作品で、19世紀当時のオランダにおける貧富の格差や文化・風俗・ファッションなどの風物が詳細に描き込まれています。

後年のルイ・マル監督『プリティ・ベビー』(1978)や『娼婦ベロニカ』(1998)のように、娼婦として生きる道を選んだヒロインの数奇な生き様をドラマティックに映し出した人間ドラマであり、貧困からの脱却を目指す家族の彷徨という意味ではジョン・フォードの名篇『怒りの葡萄』(1940)にも通じる部分があります。

主演のモニク・ヴァン・デ・ヴェンが豊かな暮らしを求めて逞しく生きるヒロインを体を張り演じ切っていますし、彼女と惹かれ合う資産家役で若き日のルトガー・ハウアーの姿を見ることができます。
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