ゆるくま

娼婦ケティのゆるくまのレビュー・感想・評価

娼婦ケティ(1976年製作の映画)
3.8
ヴァーホーヴェン節は、初期の頃から炸裂してたっぽい。
原作は、ネール・ドフの自伝的小説『飢えと窮乏の日々』とのこと。
オランダの極貧家庭に生まれた少女ケティのたどる数奇な運命…と言っても、そこはヴァーホーヴェンなので、悲劇的な感じはしない(過酷ではあるけれど)。

冒頭、首都アムステルダムに向かう船上で、海を見つめるケティと音楽は、何やら抒情的な歴史物めいている。が、そこはヴァーホーヴェンなので詩情的な部分は排除している感じ。
(とは言え、後のシーン、教会の肺結核の女性のシーンで、ケティが一瞬、聖母か天使に見える演出があったような)

物語はさくさく進んでいく。ヒロインもどんどん前進していく。
主人公の内面を表現する描写がないのは、この頃からの特徴なのかな。
だから主人公が悲惨な目に遭っても、つらすぎると感じなくて済むのかもしれないけど。

極貧なのに子だくさん(ケティには兄弟姉妹が山ほどいる)の家庭の描写がすごい。
仕事につけば、モラハラ、パワハラ、セクハラに遭ってたびたび仕事を辞めることになるが、ケティも毎回負けていない。

とうとう、身を売らざるを得なくなるのだが(母親が付き添いという…)、ある時、画家に発見されモデルとなり、そこから銀行家や階級の上の者と知り合いになる。
銀行家はルトガー・ハウアー。
上流階級のマナーを覚えたり、上等の衣服で身を飾ったり(たぶん原作では読書のことも、もっと書かれていたのでは?)
銀行家と同棲を始めて順風満帆ではあったが…。

ラストの唐突さ、あのセリフの意味はよくわからない。
(原作は階級を駆け上がった後の話も続くらしい)

それはともかく、なかなか面白く見れました。
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