【あらすじ】
東西冷戦下の英国が主な舞台。
英国秘密情報部(サーカス)の幹部のリーダーであるコントロールは、サーカス内に二重スパイの「もぐら」=裏切り者がいると考える。
そこで亡命を望むハンガリーの将軍が裏切り者の名前を知っていたため、ハンガリーに工作員ジム・プリドーを送り込む。しかしジムは射殺され、情報が漏洩してしまう。
直接的にはこの作戦の失敗により、コントロールと彼の右腕のジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)は引退することに。コントロールは引退直後に死亡する。
その後、外務次官のレイコンは、リッキー・ターという人物から「もぐら」がいるという密告を受ける。レイコンは、スマイリーを「もぐら」探しの任務の担当にする。
スマイリーは、情報部のピーター・ギラムらをチームに加え、当時の資料や関係者への聞き取りを行っていくが…。
他方、サーカスの現チーフであるパーシー・アレリンらは「ウィッチクラフト作戦」という諜報活動を推進していた。
【感想】
自分には難しい映画だった。結構複雑な映画。だけど雰囲気だったり、俳優さんの演技がとてもはまった。
しかし、時代が遡ったり現在に戻ったり、舞台が移ったりするが、「○年前」とか「パリ」、「ロンドン」のような表記が出てこない。ある意味不親切な印象を持った。
人物もたくさん出てくるし、それぞれの関係性も分かりづらかった。またもう少し人物の関係性やそれぞれの個性を掘り下げていたら分かりやすかった気もした(もっとも、会議やパーティーの回想のシーンでは、それぞれの人物の特徴が出ていたとは思うけれども)。
展開や裏切り者は誰か?という点は、ある意味読みやすい映画かもしれない。
他のスパイ映画と比べると、派手なシーンやアクションは全くない。
むしろ騙したり騙されたり…必要なら敵に気付かれないようにして静かに手を下す…という感じで、こちらの方が現実のスパイに近いかもしれない。
出てくる人物が互いに疑心暗鬼になっているのは、やはりスパイだからなのだろうか。スパイ同士のドロドロした関係や裏切りの他にも、恋や不倫なども描かれていて人間臭い物語。
だけど基本的にはスパイという文脈で考える必要があるようである。
最後の音楽が流れるラストのシーンが印象的。台詞なしで魅せるラストだったと思う。
そして、出てる役者さんが豪華な映画でもある。
個人的にはジョン・ハート、ゲイリー・オールドマンとコリン・ファースの共演が熱かった。脇を固める俳優さんも結構実力派の人たち。
ゲイリー・オールドマンの地味だけど堅実な曲者感は凄かった。メガネも似合ってる。
どの人物も基本的に感情を表に出さない。そしてどの人物、役者さんもかなり渋い。2回目見ると少しの表情の変化や台詞の言い回しなどで色々新しい発見があるのだろう。背中で語るおじさんたちの映画みたいにも感じた。
ちなみにコリン・ファースが演じるヘイドンの暗号名はテイラー(仕立て屋)である。
またヘイドンとマーク・ストロングが演じるプリドーは友人である。
『キングスマン』では、仕立て屋がスパイ組織の本拠地だし、コリン・ファースはハリー・ハート、マーク・ストロングはマリーンをそれぞれ演じている。つまり、これって『キングスマン』じゃないか…笑
気軽に見られる映画ではなく、人物の顔と名前を一致させたり、関係性や立場を考えるのに結構頭を使う映画だった。
英国の有名な俳優さんが多数出てるので、彼らの共演や名演を見たい人にはおすすめだと感じた。
【メモ】
・映画の背景と対立構図
東西冷戦下の英国が舞台
米国&英国=西側諸国
ソ連&ハンガリー=東側諸国
西側諸国でソ連のスパイが活動したり、東側で英国のスパイが暗躍したり…があった
・KGBはソ連の諜報機関
・劇中に出てくる「カーラ」は人物名(ソ連の機関の名前ではない)。
・「ウィッチクラフト作戦」
英国側は価値がなく偽った情報をソ連側に渡し、お返しにソ連の最高機密情報を入手するという作戦。在ロンドン・ ソビエト大使館の文化担当官、アレクセイ・ポリヤコフが窓口。
しかし、この作戦は…。またソ連側の狙いは…。
・幹部たち
人物(演者)=コントールが付けた暗号名(つまり裏切りを疑われている5人)
コントロール(ジョン・ハート)
基本的に回想シーンのみで登場
ジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)=ベガーマン
パーシー・アレリン(トビー・ジョーンズ)=ティンカー
ビル・ヘイドン(コリン・ファース)=テイラー
トビー・エスタヘイス(デヴィッド・デンシック)=プアマン
ロイ・ブランド(キーラン・ハインズ)=ソルジャー
※コントロールは、上記の5名の幹部のうち、誰かが「もぐら」であると推測。
・その他の重要な人物たち
ジム・プリドー(マーク・ストロング)
死亡した工作員
ピーター・ギラム(ベネディクト・カンバーバッチ)
中堅幹部か。スマイリーとともに「もぐら」を探す。
リッキー・ター(トム・ハーディ)
ギラムの部下の工作員
オリヴァー・レイコン外務次官
カーラ
アレクセイ・ポリヤコフ
在ロンドン・ソ連大使館文化担当官
イリーナ
亡命を望むボリスの内縁の妻。ターが恋をする人物
アン
スマイリーの妻