くりふ

気狂いピエロの決闘のくりふのレビュー・感想・評価

気狂いピエロの決闘(2010年製作の映画)
3.5
【フランコを噛め】

私には初イグレシア『スガラムルディの魔女』が面白く、またカロリーナ・バングさんが、こちらの方がよりムフフに思えたのでレンタル。

で、カロリーナ萌え度はずっと高くおっぱい最強!窓ガラスに乳突きなんて、曲芸師だけど乳芸まで見せてくれます。

原題は最後のサーカス、の意味らしいですが、邦題の方が内訳はよく伝わりますね。

物語の肝である、狂気の三角関係を追うだけで面白いですが、背景にあるスペイン内戦と併せないと味わい尽くせないとは思った。スペイン人でなく史実にも疎い私には感覚的に響かぬところアリ(泣)。多分そうだろうな…という部外者視点になりますね。

実在の施設である、戦没者の谷の使い方などは成程なあ…と思いましたが。あそこ、モンド映画みたいな味わいがありましたね。

主人公の泣き虫ピエロ、ハビエルが父親共々、内戦に翻弄される様は冒頭ハイテンションで伝わりますが、父子共々初めから狂っているように見えます(笑)。

同じ環境でも壊れない人間もいるわけだから、その後怪物化するハビエルが単純に内戦の申し子、とは言えないと思った。

彼と対立するバイオレンスな怒りのピエロ・セルジオと、カロリーナ演じるだめんず女神ナタリアも初めからどこか壊れているので、余計に内戦からは心、遠ざかる。

70年代に入ってもまだ国情は安定せず、テロが起きたりもしますが、背景から熱くする史実と、主要人物の言動との因果関係が薄いと感じてしまう。そのあたりがピンと来ない。

スペイン内戦は世界二陣営による代理戦争の面もあったし、監督は俯瞰視点から、二人のピエロとその対立関係に内戦以降の自国の狂気も代弁させているのでしょう、多分。スペインって酷い国だね(笑)。人んちのこと言えないけどさ。

演出はドギツイ局面ありながらもハリウッド流にスマート。見易いですね。終盤のカメラワークなんて『LOTR』みたいな盛り上げ方。映画をオタク的に好きで、映像の主流を気にする監督かと思った。

逆に既視感もあったけど。初めて曲芸するナタリアを見上げる、ハビエル愛の視線は『ベルリン・天使の詩』そのままだったし、ピエロには明らかに『バットマン』『ダークナイト』のジョーカーの影響を感じ、モデルじゃないかとさえ思った。

全般、勢いはあるけど、オリジナルとしての突き抜け感は薄いと思う。

謎が二点。サーカスよりずっと魅力的で儲かるように見える、ナタリア・セクスィダンス推しのあの「お店」、なぜにコジャック?(笑) 当時スペインで人気あったのでしょうか。

もひとつ、巨大十字架の上に赤い帯ロールが置いてあったのは何故? 含まれた意図があるなら、そこから映画の見え方がかなり変わる気がしています。

<2015.4.23記>
くりふ

くりふ