Jeffrey

神曲のJeffreyのレビュー・感想・評価

神曲(1991年製作の映画)
3.0
‪「神曲」‬

‪冒頭、広大な精神病院。

アダムとイヴ、キリスト、預言者と哲学者、ラスコーリニコフとソニア、カラマーゾフ兄弟。様々な患者の成切、宇宙の始まり、ラザロの復活、マルタの霊感、ピアノ演奏、院長の首吊り。今、人間は神聖なる喜劇を永遠に反復し続けるのか…

本作はマノエル・ド・オリヴェイラが91年に監督した彼自身の最高傑作と評された本作をこの度初見したが虚構に満ちた室内劇で、中々難解でコレまた退屈なドラマだった。

冒頭から禁断の果実を食べるアダムとイヴが演出される。天気は豪雨に変わり、ピアノ演奏と雷雨を奏でる。そこからディナーになり神を論じ始める人々の描写が始まる。

斧で老婆の頭をかち割って鍵を盗む男の描写は恐ろしいほど不気味だ。

本作は監督の最高傑作とされているようだが個人的には普通の感覚だ。とりわけ精神病院を舞台にしているがどう考えても内装が病院ではなく豪邸のようなものだ。軈て140分の映画を見終わる頃のラストに衝撃的な"音"で我々は気がつくのだ、この作品の本当の意味を…。

劇中ほとんどが室内で撮影されており様々なものがスクリーンに映り込む。それを1つずつ解きほぐし物語を追うような作風だ。まぁとりわけ出典と登場人物に関して考えてみると冒頭はやはり旧約聖書の有名な部分の引用な為、西洋の神話の情報が必要だし、世界にどのように罪が存在し始めたか、それはどの様な行為で出現したのか…

神は何を創りたもうたのか…それらを理解しつつ映画を見ていく必要がある少しばかり難解な作品だ。

そこに静寂、黯然、幻想と揃い、退屈すぎる語りが永遠と続く。正直言ってマタイ、ヨハネ、ルカやマルコの4福音書に次ぐ第5の福音書まで強調されると、訳が分からなくなる…私は有心論者でもないし、この点はものすごく疎いのだ。

決して嫌いではない他国の文豪や思想家のインスピレーションが多くあった。

例えばニーチェやドストエフスキー等の彼らの表現が散りばめられている作品だなぁと思う。

本作は東洋人、とりわけ日本人には非常にわかりにくいと思うのだが…俺だけか?

さて、物語は精神を病んだ人たちが収容されている精神病院の描写から始まり、そこに旧約聖書のアダムとイヴの楽園追放のきっかけとなった知恵の実を食べる印象的なシークエンスから物語が展開する。

この精神病院に訪れた預言者と哲学者の平行線をたどる神に関しての議論が白熱する…と簡単に言うとこんな感じだが物語自体はもっとディープに進む。

本作には有名どころの音楽が流れる。
みんなが知ってる所のシューベルトに始まり、バッハやシューマンそれにショパンなどが演奏される。
それは終盤のピアノを弾く女性の窓越しの患者の風景がとても印象的に感じれる魔法の”奏で“である。
結構、細かなカット割りやショット数が多くて今までの彼の作風とはちょっと違う趣も感じ取れた。
それにしてもいわば監督のお気に入りの役者が勢ぞろいで一種のスペクタクル感を味わえる。‬

‪世間で言われるシネフィルが観る分には楽しめるんだろうが、基本娯楽映画を観ている方々には難易な作品だ。‬
Jeffrey

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