zhenli13

ニックス・ムービー/水上の稲妻のzhenli13のレビュー・感想・評価

4.0
エンドクレジットでは監督にニック・レイとヴィム・ヴェンダースが併記されていた。
おそらく死期が近いであろうニコラス・レイ=ニックの映画を撮ろうという時点で結末として予想されるのは死でしかない。そういう一直線の方向性でしかない。若いヴェンダースが実際ニックを前にし共に過ごして、ヴェンダースの頭の中の想像を飛び越して実際に死が近づいていることの重さに逡巡する。フィクションとしてのフィルム撮影、ビデオ映像などが混在する。ニコラス・レイの遺作"We can't go home again“のラッシュを観るシーンがある。その作品もまたフッテージのコラージュのようになっていて、本作と相似形のようにも見える。
ニックには若い友人のヴェンダースに自分の姿を撮らせようという矜持がある。彼はいつも赤いシャツなどを身につけていてかっこいい。序盤で激しく咳き込む後ろ姿の赤いシャツに背骨が浮き出る。真っ白のベッドに横たわる彼とヴェンダースの元妻が演じる『リア王』、上下白い服の中にもニックは赤いシャツを着ていた。死を目前にして、演じるということ。

ニックがカメラを見て「カット」と言い暗転した後にも、おそらくさらに衰弱していく彼がいたに違いない。それを撮らなかった・撮らせなかったということは、何かこの作品が「ある域」を出なかったという、映画にできることの限界も見える。エピローグは余分に感じた。
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