このレビューはネタバレを含みます
10/30@東京国立近代美術館フィルムセンター
冒頭のウォール街のロングショットからワクワクが止まらなかった。本作の主人公である弁護士ジョー・モース(ジョン・ガーフィールド)がまるでメフィストファレスの様に、身内である兄を含む周囲を組織に巻き込んでいくものの、徐々に歯車が狂っていく話。特にそれぞれの場所に赴き手なずけようとしていた人たちが法廷で集結する場面から反転するかのように佳境を迎える様は見事だった。
物語の筋書きも興味深いものの、最も惹かれるのは構図、陰影、カット割といった映画的な語法。構図は序盤の兄と初めて会話しにいく場面からジョーの顔のアップの挟み方やフレーム内の位置づけで場の優勢が反映されていたし、陰影は室内での顔のクローズショットに投げかけられ、壁に引き伸ばされた影でさえ不穏なもので、ピークは終盤における三つ巴の銃撃戦。幾何学的な影によって部分的に身体が隠され緊張感が高められ魅せられた。警察ががさ入れする場面のクローズショットの連続、簿記係のバウアーの最期の顔と銃のアップ、初めて盗聴に気づいた時に挿入された目のショットも最高だった。
そして常にジョーの側、つまりは悪の側にそって鑑賞者は見ることになるので、ヒロインのドリス・ロウリー(ビアトリス・ピアソン)の美しさと顔の光が際立つというもの。「説教するな!」も恐らくキリスト教にかかっているはずで、彼女の聖母としての象徴、そして本作の罪と罰というテーマも感じられた。