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タワーブロックのEikeのレビュー・感想・評価

タワーブロック(2012年製作の映画)
3.1
英国製の低予算B級作ですがB級らしい面白さはあり。

設定は強引ですし、展開にも無理がある作品です。
最初に「こういう設定って面白くね?」とシチュエーションのアイデアありきの企画であることは明らかですね。
得てしてそういうワンアイデアの作品は出だしは威勢が良くてもすぐ燃料切れで尻つぼみになりがち。
本作もまぁそういう雰囲気の作品ではありますが英国製らしく、スタイルを優先するのではなく人物造形・描写に留意しているおかげで、ドラマとしてちゃんと見れる作品になっております。

”Block”とは居住区の様なニュアンスでしょうが、あまり良い響きではないようです。
同じイギリス映画で 「アタック・ザ・ブロック」なんて作品もありましたが主に低所得者層向けのアパートを指すようです。

舞台は老朽化が進んだ高層アパート。
間もなく再開発で取り壊される予定で現在は最後に残った最上階の住人だけが住んでおり、他の階は全て封鎖済みという状況。
そんなある日、このアパートに逃げ込んで来た若者が追ってきた暴漢に殺されるという事件が発生。
面倒に巻き込まれないように堅くドアを閉ざして若者の助けを求める声を無視する住民たち。
唯一人いたたまれずにドアを開け暴漢たちを制止しようとした姉御肌のベッキー(シェリダン・スミス)でしたが顔を隠した二人の暴漢にノックアウトされてしまいます。
この事件から数か月後のある朝。
いつもと変わらぬ朝を迎えたタワーブロックの住人達を何者かが放つ高性能ライフルの銃弾が襲う...

物語はほぼ全編この老朽化したアパートの中に限定。
周囲からポツンと孤立したかのような高層アパートの風景ショットが度々挟み込まれ、雰囲気は良く出ております。
しかしこのアパート、あくまで町の一画にある訳で通信遮断や完全孤立で助けを求められない...という説明にはちょっと無理があるかな。
結果として脱出に向けた後半の展開もかなり荒っぽくなってしまっている印象です。
それと謎の狙撃手のショットは時折挿入されてますがどこから狙いを付けているのかは描かれておらず犯人と標的となる住人たちとの距離感と言うか立体感が描けていない気がします。

制作側の意図は犯人の正体やその動機には無いと明言されているようにミステリとしての側面よりも究極の状況に放り込まれた人々の生々しい行動の描写に重点が置かれています。
そしてその面では中々に見応えがあって、それ故に楽しめる作品になっていると思います。
非アメリカ映画的な面構えの揃った面子はヒロインを含め、あまり見栄えは良くない(笑)。
ですが、その分シビアな展開のお話に一定の生々しさが生まれているのも事実で、情けなかったり、我がままだったり、あこぎだったりする住人達は、いずれもキャラが立っております。

この設定上、あまり大きな動きは出せないのですが狙撃によるバイオレンスシーンは思いのほかエグい出来になってます。
結果として誰が生き残るのか予断を許さない展開で理詰めで深く考えなければその手の映画好きなら楽しめる作品だと思います
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