こばいあー怒りー

魔女のこばいあー怒りーのレビュー・感想・評価

魔女(1922年製作の映画)
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大学講義のような体裁で中世の魔女にまつわる文化史をレクチャーする。
単調な作風かと思いきや、この映画はれっきとしたホラーに分類され、それどころかサイレント期の紛れもない傑作である。

それはこの作品が学術講義の皮をかぶった「視聴者巻き込み型」ホラーに他ならないからだ。

中世の封建的偏見に満ちた魔女狩り、迷信、伝説を特殊メイクで画面に生々しく蘇らせるシーンは現代の人間が見ても引き込まれるものがある。
しかし、この作品が単なるゲテモノ映画に陥らないのは、そういった現代社会から時代的に隔絶された魔女の世界をまことしやかに今の(1922年当時の)世情と関連づけているからだ。
現代にも存在するヒステリー、精神疾患、妄想狂の類が、かつては悪魔や魔女の仕業であったと考えられていた…

伝説や迷信が現代に蘇る。
「これを見ているあなたにも関係がないと言えますか?」と言わんばかりの物語の延長のやり口は、「イントレランス」や「十誡」にもあった覚えがある。

第一次大戦後にファシズムの影が忍び寄っていたヨーロッパ。人だけでなく社会も病みつつあった20年代の世界にこういった映画が産み落とされたことは、なんとも確信的であったように思えてならない。

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ちなみに、紀伊國屋盤のDVDの音楽は、サイレント映画伴奏の名手である柳下美恵氏によるもの。名演!
バロウズ版より長尺で画質も良く初めて観るにはおすすめ。