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平成ジレンマのeulogist2001のレビュー・感想・評価

平成ジレンマ(2010年製作の映画)
4.0
体罰というのは進歩を目的とした有形力の行使である。恥が人間を進歩させると明言する戸塚宏校長。その戸塚ヨットスクールには80年代に最大100人以上が在籍していた。卒業生は800人を超える。今なお、30代40代の引き篭もりが入学してくる。

そのスクールで4名が事故死する。当時は格好のマスコミの餌食になり、結果的に校長は6年の実刑を得る。

体罰は暴力。暴力は悪。特に教育界ではその風潮が一気に広まった事件。生徒は教師と同格になり、むしろお客様扱い。いじめや体罰はすぐに事件として執拗にマスコミの「いじめ」に合う。そうした環境の中、表面的な非行や暴力は水面下に隠れて、代わりに引き篭もりやニートが、一説には70万人を超えるようだが、大量に生産され、責任は個別の家庭が担う。担い切れない家族が止むに止まれずスクールに駆け込む。

そんなスクールに校長が戻った2010年頃を丹念に取材した作品である。
もはやソフト型の管理組織においては更生不能な彼らを人生を掛けて指導する。そこにはマスコミが報じるような「悪」のイメージはない。

本筋から少しズレるがスクールを脱走した生徒を保護する「人権派」弁護士の情報源もマスコミ報道である点が、この作品の中では最大の皮肉に見えた。

育児の仕方、教育のあり方、社会的不適応者の矯正、マスコミの上っ面さな正義感面、それに簡単に踊らされる社会の風潮。いろんな事を考えさせられた。

中村獅童のナレーション。2011年
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