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ベン・ハーのNMのネタバレレビュー・内容・結末

ベン・ハー(1959年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

1880年のアメリカのルー・ウォーレスの同名小説がもと。
何度か映画化されていて、少しずつ人物設定やストーリーが異なる。例えば本作で出てくる馬のアリウスは、別映画では人物の名前。
並行してちらっとイエスも出てくるがそちらはほんのサイドストーリー。

色々な神や仏たちが行う奇跡のなかで、特にイエスが行う、人々が赦し合うようになる、というのが一番好き。本来はそんなの人間どうしでいくらでもできるはずだけど、どうしてもできないときがある。こじれた関係にふいに和解をもたらしてくれたとしたらそれは奇跡と言うに値すると思う。

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紀元33年のエルサレム。
ローマの圧政に市民は不満を募らせていた。

ユダヤの豪族の御曹司、ジュダ・ベン・ハー。
王家の血筋であり人望もあり不自由なく過ごしているが、ユダヤ人は今や国を失った状態にある。

ローマ人のメッサラは身寄りをなくし、この家に引き取られた。亡きジュダの父は、この二人が2つの国の調和のきっかけとなってくれたらと願っていた。
2人は本当の兄弟のように仲が良い。妹のティルザも特別に彼を慕っている。
ただ母ミリアムだけはメッサラに冷たい。ティルザとの仲など許すはずもない。

メッサラはこの家に本当の居場所はないと感じていた。
ジュダたちと仲は良くとも、常に自分との違いを感じる。ティルザを好きでも、自分の身分では見合わない。
功績を立てるべく、ローマへと向かった。

メッサラは日々戦闘に明け暮れる。
一方ジュダは下女だったエスターと結婚。
ジュダの家とローマとの関係は良好だが、圧政はますます酷くなり市民同士の摩擦も増えていた。

3年後、今や司令官となったメッサラが戻り、二人は笑顔で抱き合った。
母ミリアムはすっかり感心し、ティルザも見とれた。
メッセラの働きを見た総督ポンティオ・ピラトが目をかけてくれたのだった。
ただ直属の上官のマルクスにとってそんな彼は目障りで、事あるごとにメッサラの生い立ちについて言及し蔑む。安全な出生街道にいるわけではない。

近くここ総督ピラトが行進する予定があり、メッセラはその護衛のために戻ったのだった。
この地でピラトの評判は良くないので、無事遂行するために人望のあるジュダにも協力を直接頼む。メッサラは絶対に失敗できないし、上官も見返したい。今のメッサラは、ローマに反逆する者は殺すか服従させるかであるという極端な考えに至っていた。
ジュダに対し、反抗的な思想を持つ者を見つけて寝返らせるか、彼らの名前を挙げろと迫る。
ジュダはこれを拒否。

行進の日。遠巻きに見守る民たちの目は冷たかった。
その途中、ジュダの家で一時保護していたケガ人が、隙を見て独断で総督に向けて矢を放った。
誰が矢を打ったのか顔までは目撃されていないが、この家からだったのは確か。
家に軍隊が流れ込むが、当人は素早く逃げ出していった。家の者たちが羽交い締めにされ連行されていく。
家で弓矢が見つかり、過激派を匿っていたとされた。
犯人を言わないと家族全員を殺すと言われ、ジュダは自分がやったと嘘をついた。
メッセラが駆けつけ、家族たちは助けてくれとメッセラに懇願。
しかし、上官にお前も裏切ったのかと言われ、メッサラ自ら家族全員連行するよう命じた。

手を縛られて行くその道中、不思議な男が現れた。ローマ軍たちを恐れもしない。思わず兵隊もたじろぐ。
倒れたジュダに水を飲ませ「君だってこうするだろう」と言った。

ガレー船に着くと番号で呼ばれ漕ぎ手として働かされた。常に鞭打たれる。十分に働けないとなれば処分されるのみ。

5年後。
ジュダは過酷な環境に耐え生き延びていた。その目がぎらりと光っている。

イオニア海、船はギリシャ軍の奇襲に合った。フルスピードで進む。
船は衝突、海水が流れ込み、火矢が飛んでくる。
やがて船が沈む。散り散りになり、全員海の底へ。
しかしジュダだけは水中で、繋がれた鎖を外すことに成功。
そのまま折れた帆柱に浮かんで漂流する。

メッサラは総司令官となっていた。彼のもとに、イオニア艦隊全滅との報せが届いた。

ジュダは浜辺に打ち上げられた。
目を覚ますと水と食事が置かれている。
美しい馬が4頭おり、そのうち一頭が弱っていたのでその水を少し分けてやった。
そこへこのグループの長らしき老人イルデリムが声をかけた。彼らは放浪生活をしており今はエルサレムで行われる馬車レース大会に向かっているところらしい。だが馬車には4頭必要なので、このままでは勝利は難しい。
彼らは本来なら脱獄囚はローマ軍に引き渡す義務がある。
ジュダは、その病気の馬を看病できるから、俺をエルサレムまで連れて行ってくれと頼み、交渉は成立した。

エルサレムではあの不思議な男がまた倒れた人を助けていた。
ハンセン病の男がで人々から石を投げられていたところに割って入り、怒りを沈め愛を解いた。この時代ハンセン病患者は隔離され差別される存在。
ピラトはメッサラに、あのイエスという男には気をつけろと話した。

やがてジュダは馬を少しずつ元気にしていく。
イルデリムは礼を言った。
一行はともにエルサレムへ。

妻のエスターは生き延び、仕事も見つけていた。そしてイエスに師事し福音を広めていた。
二人は誰もいない路地で再会を喜ぶ。
母と妹は磔になったらしいが、埋葬場所は不明。
夜、ジュダはかつての屋敷へメッサラを呼び出し、母と妹の埋葬場所を聞き出そうとした。
しかし揉み合っているところに控えていた部下たちが押し入ってきたのでその場を去る。

ローマ人であるメッサラを殴った見せしめとして、無関係のユダヤ人20人が磔刑になった。
エスターは、復讐をやめないならもうついて行けないとジュダのもとを去っていった。

彼の復讐心に共感していくイルデリム。
イルデリムの息子も反逆罪として残忍に処刑された過去があった。

イルデリムはローマ軍のもとへ出向き、レースでメッセラとの一騎打ちを申し出た。
勝てば、私たちの騎手が抱えている問題を不問に付してほしいと。
多額の持参金と有利な条件であることもあり、ピラトは受諾した。

騎手としてジュダを特訓する日々。イルデリムは全ての戦略を授ける。

ある夜、あのときのローマ軍の一人が来た。母と妹は今も生きて洞窟で暮らしていると告げる。
会いに行くと、二人ともハンセン病を患い暗い部屋に閉じ込められ、彼を見ても混乱し遠ざけた。
メッセラへの憎しみを新たにするジュダ。

馬車レース当日。
各国の猛者が集まり、様々な妨害をしかけ合う。
次々脱落。一騎打ちとなったメッサラが落馬し、ジュダが勝利した。
しかし復讐とはいえ義兄弟を無くしたことを実感し、複雑な思い。
イルデリムは一緒に大金持ちになろうと誘ったが、ここに留まるとを告げる。

ついにイエスが磔刑されることに。
ゴルゴダへ向かう途中倒れたイエスに、今度はジュダが水を差し出した。

死んだイエスを悼み、ジュダとエスターは慰め合い和解。
その日母と妹の病は消え、イルデリムが持参金とともに二人を迎えに来てくれた。

メッセラはレースの事故で片足を失ったが生きていた。
ジュダは、もう戦いたくない、お前は昔落馬した俺を運んでくれた、今度は俺の番だと語り、二人は抱き合った。
家族とも再会し、お互いをゆるしあったのだった。
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