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ガリバーの大冒険のmitakosamaのレビュー・感想・評価

ガリバーの大冒険(1960年製作の映画)
3.2
ガリバー旅行記の映像化。1章の小人国リリパット編と2章の巨人国ブロブディンナグ編までで構成されている。(原作には3章・天空城ラピュタ編と4章・スイフム編まである)

60年の制作ということで、当時最高レベルであったろう合成技術が見どころだ。小人や巨人を相手にするガリバーの映像だけでも見る価値がある。小人と対比するガリバーの帽子や、ガリバーが埋もれる巨人の家具など、バジェットもちゃんと作ってあって素晴らしい。
モスラが61年だから今作は大いに影響されただろうなぁ…

また今作は巨人国でのリスとワニに、ハリーハウゼンによるミニチュアのストップモーションアニメが起用されている。これがまた福眼だ。

因みにジョナサンスウィフトは当時のイギリスではかなりの左翼で政治批判をしていた人だったらしく、ガリバー旅行記は実は政治を揶揄する風刺が込められたいたんだと。

確かに、小人のリリパット族の戦争の原因が“卵を上から割るか下から割るか”などというどーでも良いネタだ。これは18世紀のイギリスで、カソリックとプロテスタントの争いを暗喩するモノなんだってさ。ふ〜ん。へ〜。
リリパットは植民地だったインドっぽい雰囲気もあるし、その意味では1章リリパットは良く出来ている。

だが、2章ブロブディンナグはちょっとニュアンスが違う。
本来の原作なら、見おろしていた小人は無知で取るに足らない存在だったが、逆に巨人を見上げる立場になった時にイギリス人社会の未熟さを痛感するという展開だ。
見おろす=見くだす存在から見上げる=+見くだされる存在に墜ちる。これがスウィフトの凶悪な真意だった筈の物語だ。

だが今作の巨人は無能な王と狡猾な宰相(医者)にガリバーが強気な態度で挑むと言う展開だ。
小人も巨人も王様がバカだ。

冒頭、傲慢だったガリバーは恋人エリザベスと喧嘩ばっかり。巨人に捕らわれていた2人は無事イギリスに帰る事が出来るが、ガリバーは傲慢なままだ。
別に謙虚さを身につけ人間として成長する訳じゃ無い。学びの無かった旅で終わるは残念だな。
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