いやこれなかなか面白い。ストルガツキー兄弟の『神様はつらい』を読んだことがないのだけどおそらくアレクセイ・ゲルマン『神々のたそがれ』よりも、すじを追うという意味では原作に忠実なのではないかなぁと予想(両作とも原題は『神様はつらい』"Hard to be a God“ このタイトルいいよなぁ)。といっても私『神々のたそがれ』も寝落ちしちゃったので全容が見えてないのだけど…野蛮さや穢さを「地球人」主観で延々と見せるゲルマン作品(嫌いではないがちゃんと観返すにはかなりの気合いが必要)に対してフライシュマンの本作は娯楽作品としてのドラマ性をきちんと担保している。 主要な女性キャストがみんな美しい。ヴェルナー・ヘルツォークの名前がクレジットされているが割と最初の方でいなくなる。国王役がピエール・クレマンティ。 「観察者」として送り込まれた男性の主観が大きなモニターに映され地球人たちが「観察者を観察する」構図として何度も出てくる。ずっと観察している地球人の女性はほとんど逆光のシルエットで表情が判然としないのだけど最後だけ判るようになっている。感情移入が全体のテーマとなっている感じ。美術セットや衣裳などはゲルマンと共通するものがあり(先ほど『神々のたそがれ』トレーラーを観返したがこちらはさらにヒエロニムス・ボッスやジョエル=ピーター・ウィトキンの作品をもうっすら想起させて素晴らしい。だんだん観返したくなってきた)ソ連SFを髣髴とさせる好みの道具立てだし、起伏のある赤い山肌のロングショットも好い。多国資本で製作費も結構かかっておりかつて松竹からVHSが出てたらしい。脚本がブニュエル作品などのジャン=クロード・カリエール。どこかにSFコメディと書いてあったがコメディではない。