りっく

ジャン・ルノワールのトニのりっくのレビュー・感想・評価

ジャン・ルノワールのトニ(1935年製作の映画)
3.4
フランスにやって来るイタリア人の出稼ぎ労働の実態を題材にし、人種のるつぼと化す環境下でのメロドラマと、愛する女性の罪を背負って静かに死んでいく男の生き様が、過度にセンチメンタルでヒロイックに描かれるのではなく、あくまでもレアリスムを突き詰めた結果、悲哀や痛みがより直接的に観るものに伝わってくる。

冒頭で意気揚々と夢見心地でフランスへとやってきた労働者が口ずさむ軽快な歌が、ラストでもう一度反復されるが、その歌を聴く観客の心の持ちようが全く変わってしまう物語構造になっていて巧い。現在の視点から見ると、あまりにも女性蔑視が過ぎるのがノイズになるものの、夢も愛も破れて、それでもどのように生ききるかを力強く描いてみせる。
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