凛太朗

テナント/恐怖を借りた男の凛太朗のレビュー・感想・評価

テナント/恐怖を借りた男(1976年製作の映画)
3.7
アパートが舞台でこういうサイコホラー的雰囲気の映画、観たことあるなぁと思ったら、『ローズマリーの赤ちゃん』で、その『ローズマリーの赤ちゃん』の監督ロマン・ポランスキーが監督・脚本・主演を務めているのがこちら、『テナント/恐怖を借りた男』。
ポーランド系の青年トレルコフスキー(ポランスキー)がパリでアパートの部屋を借りようと思ったら、その部屋でシモーヌという女性が自殺を図ったと聞かされる。しかしそれでも部屋を借りたことから、恐怖の幕が開けるのであった。

ポランスキー自身の性癖やら過酷な過去は調べれば出てくるので置いといて、ポランスキーが演じたタルコフスキーみたいな名前のトレルコフスキーは、どっからどう見てもポランスキー自身を投影したものですね。
第二次世界大戦下の過酷な経験なり、元妻シャロン・テートをあのチャールズ・マンソンの信者に惨殺されたという悲劇や、この事件をきっかけとしたマスコミの酷い対応は、ポランスキーを人間不信に陥れてしまうには十分で、当然この映画にもその影響は大いにあります。隣人すら信用できず、被害妄想で頭がいっぱいになっても何も不思議ではありません。
そこが心理的に恐ろしくもあり、可哀想だとも感じてしまいます。後のポランスキーの性癖による事件を擁護できるものではないかもしれませんけど。
女装はシモーヌの影に悩まされた結果の他、満たされない自分ではなく、他の存在に成り代わりたいという変身願望なのかもしれませんね。

シモーヌの友人であるステラ(イザベル・アジャーニ)と映画館でブルース・リーの『燃えよドラゴン』を観ながらあっちのドラゴンも燃やそうとしてたら、斜め後ろの客がガン見してたというあのシーンはめっちゃ笑った。
凛太朗

凛太朗