テナント/恐怖を借りた男の作品情報・感想・評価

テナント/恐怖を借りた男1976年製作の映画)

THE TENANT

製作国:

上映時間:126分

3.7

あらすじ

ポーランド人のトレルコフスキーは、パリのアパートの一室を借りた。前に住んでいた女性シモーヌは、この部屋から飛び降り自殺を図ったという。壁の穴に押し込まれていた1本の前歯。部屋に残されていた女性のドレスと化粧道具。煙草の銘柄や飲物の好みの変化……。やがて彼は周囲の人々によって自分がシモーヌに変えられていく事を感じ始める。被害妄想は次第に膨れ上がり、ある夜、その妄想は現実と化す……。

「テナント/恐怖を借りた男」に投稿された感想・評価

netfilms

netfilmsの感想・評価

4.0
 ロマン・ポランスキーほど、自らの人間不信・被害妄想癖を物語に盛り込んだ監督はいない。幼少期に第二次世界大戦を体験し、母親はアウシュビッツでドイツ軍に処刑され、父親も強制労働させられる。フランスに逃れてからも「ユダヤ人狩り」を恐れ、国を転々としながら、アメリカのヒューストンに居を構える。そのアメリカでの生活の最中、二度目の結婚で妊娠8ヶ月目だった最愛の妻シャロン・テートを、チャールズ・マンソン率いるカルト宗教信者にめった刺しの末殺される。そういう監督自身の暗い境遇が、作品の中には色濃く投影されている。『反撥』では神経質で潔癖性のヒロインが、男性不信からやがて薄暗いアパートで精神を病んで行く様子を描いた。『ローズマリーの赤ちゃん』では隣人たちによって生まれて来る赤ん坊を悪魔の子にさせられてしまうヒロインの恐怖を描いた。つまりこれは彼の中に元々あった作風が、シャロン・テート刺殺事件で更に症状が悪化したと思って間違いない。これまでは女性ヒロインだったが、主人公は男性になり、その役を自分自身が演じることである種の倒錯的な世界観を作っている。

 ポランスキー演じるトレルコフスキーという男が、名優メルヴィン・ダグラス扮する管理人に部屋を借りに行くところから物語は始まる。当時、パリ13区の中ではなかなか良い空き物件はなく、事故物件だが、なかなか良いマンションを見つける。そこで起きた事故とは、住んでいた女の飛び降り自殺だった。瀕死の重傷を負った彼女がもし亡くなれば、その家に住めるという条件が付き、彼は病院に飛び降りた女を見舞いに行く。その女の様子がある意味怖い。片目と口以外は包帯でがんじがらめにされ、突然発狂した叫び声をあげる。ほどなく彼女が死に、マンションの住人になったポランスキーだが、このマンションの隣近所に住む人間たちの異様さがどこか怖い。メルヴィン・ダグラスもシェリー・ウィンタースも、ジョー・ヴァン・フリートも一癖も二癖もある偏屈なフランス人を誇張して演じている。どんより曇った空、どこか寒々しい人々、まるでヒッチコックの『めまい』のような螺旋階段をカメラに収めるのは、ベルイマン作品で常連のスヴェン・ニクヴィストである。おどろおどろしい建物や人々、日本映画であれば、死んだ女が化けて出るシチュエーションであるが、西洋では化けて出るのではなく、同化してしまうらしい。後半のポランスキーの女装シーンは、本気の趣味なのかと疑ってしまうくらい堂々としている。前半部分では淡々としていた描写が徐々に独特のユーモアを帯び始め、主人公の妄想が振り切れて行く。
kou

kouの感想・評価

4.5
ロマン・ポランスキーらしさ、というか妄想に取りつかれた男という物語はこの監督に描かせたら間違いないという感じ。監督自身の壮絶な経験から今作も生まれたのだと思うと見方もだいぶ変わってくる。改めて色々な意味で破格の監督だと思う。今作はそんな巨匠の味が溢れる傑作だった。

あるアパートに住むことになった主人公。そこの前住人は窓から飛び降り自殺をした女性だった。次第に彼の周りでも不思議なことが起こり、陰湿な隣人たちによって彼女は飛び降りたのだと思い込んでいく。映画の一つ一つのシーンがとても不穏で、鏡を何度も写したり、遠くに見えるトイレであったり、壁に埋め込まれている物であったり、その不気味で陰湿な感じはさすが。そしてラストで加速していく。

「反撥」「ローズマリーの赤ちゃん」にも描かれる、現実と妄想の区別がつかなくなっていく描写は見事。改めてこの監督にしか描けないホラー映画だと思う。
アパートから飛びおりた主人公(ポランスキー監督自身が演じている)がフラフラと起き上がってまた飛び降りてくるシーンがヤバかった。あれってトポールの原作にもあったのだろか。ゾワッとなる。
な

なの感想・評価

4.0
めちゃくちゃ面白い。

ポランスキー監督自ら演じる気弱な男が、アパートの隣人達の言動に、不安や、疑心暗鬼を募らせて、精神を蝕み、妄想世界に飲み込まれていく話し。


映画の進行はめちゃくちゃゆったりで地味。「冗長」や「退屈」って意見もあるようだけど、作者が、この作品に仕込んだのは、遅効性の毒で、ジワジワと、でも確実に、男の精神がヤラレテいく様がすごく怖い。一発でトドメを刺してくれない、生殺し的な意地の悪さにもシビレて、頭クラクラ。
なんであんなにおかしくなっていくのかよく分からない。
冗長であまりおもしろいとはいえない。
イザベル・アジャーニのでかい眼鏡と変なファーコート姿は垢抜けていないかんじで彼女にしては珍しいルックスな気がする。
naokit

naokitの感想・評価

3.1
さすがポランスキーと言うか、なんと言うか…とにかく気分悪い。それが、ポランスキーへの褒め言葉なんだろうな〜。
徐々に精神を病んでいく男の話なのだが、前半はやや退屈。後半のたたみ込みはなかなか。ラストに至ってはエグいとしか言いようがない。

心に余裕がある時観る映画ですな。
んー…ポランスキーさんのことやから単なる異常な変態映画ではないはず…何かしら隠れたテーマがあるはずやけど僕の頭からバネが出てきたので考えてもどうやらそれには辿り着けそうにないです。
イザベル・アジャーニと映画館であんな事になるのは深い意味がないとは思うけど 笑。
曰く付きってだけでも絶対住まへんけど壁穴から歯が出てきたら気持ち悪すぎて僕やったらすぐに引っ越すわ。
TSUBASA

TSUBASAの感想・評価

3.6
【徐々におかしくなっていく男】76点
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監督:ロマン・ポランスキー
製作国:アメリカ/フランス
ジャンル:スリラー
収録時間:126分
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ロマン・ポランスキーが監督をしている作品は中々やばいと聞きますが、今作もカオスな作品でした。いわゆる隣人すら信用できなくなるという、精神障がいを患う男の話。監督も務めて主演でもあるロマン・ポランスキーは最初こそ普通ですが、徐々におかしくなっていきます。女装をし始めたあたりからちょっとヤバいんじゃないかと思ってきてしまいます。。

パリのとあるアパートに住もうとする青年がいた。彼はその家主に部屋を借りようとするが、その無愛想な家主は、その部屋の前の住人は自殺を図ったというのだが。。

その前の住人は一命をとりとめていたものの、十分に曰く付き案件。そこに住もうとする時点で嫌な臭いがします。さて、何故前の住人は自殺を図ったのか?ここが今作の見どころであります。最初はその人は普通であったのに、周りの環境でこうも変化してしまうのです。周りも悪気はないのだろうけども、じわじわと彼を追い詰めていきます。いつしか周りより彼が最も狂人と化していて、この逆転が如何にも恐ろしい。副題の「恐怖を借りた男」とはよく言ったものです。

ロマン・ポランスキーの狂人具合が堪能できますし、密室劇のようなスリルさも兼ね備えています。まずまず楽しめました。

このレビューはネタバレを含みます

ロマン・ポランスキー監督、主演。ポーランド系移民のトラルコフスキー。パリでアパートを借りようとするが、礼金はボッタクリの上、以前の住人のシモーヌは自殺を図っていた。一体何が起こったのか? シモーヌの友人役のイザベル・アジャーニが『燃えよドラゴン』を観ながら自慰をするシーンがエロティック。一緒に観ていた友人の指摘だが、クローゼットに前の住民の服が残っているところなど、『ゴーストライター』っぽい。主人公が錯乱していく様子は『ローズマリーの赤ちゃん』か。いきなり女装したり子供の頬を叩くポランスキーが一番の謎。
隣人トラブルから頭がおかしくなる話

螺旋階段ってこわいよね
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