テナント/恐怖を借りた男の作品情報・感想・評価

「テナント/恐怖を借りた男」に投稿された感想・評価

akrutm

akrutmの感想・評価

4.0
画家・劇作家・イラストレータなど多彩な才能を発揮していたローラン・トポールの処女小説『幻の下宿人』の映画化作品。おそらくカフカに影響を受けていると思われる作風の小説をポランスキー監督が見事に映像化していて、世の中の不条理さ、他者の理解不可能性や不信感などが表現されている。

アパートの窓から投身自殺を図った女性が死亡したことによって、その部屋を借りることになったポランスキー監督が自ら演じるトレルコフスキーが、大家や隣人からの執拗な干渉を受けたり、離れのトイレでは生気のない人間がこちらを見ていたり、近所のカフェでは自殺した女性の好みのメニューやタバコの銘柄を押し付けられたりと、不条理な体験を次々としていく。イザベル・アジャーニ演じるステラとの情事だけが正気を保つための救いであったが、やがてそれも捨てて、部屋に残されていた女性のドレスを着て女装するなど、精神的に追い詰められていく。

そもそも日本だと自殺があった部屋をすぐに借りたいなんて思わないよなあなどと、最初は冷めた見方をしていたが、常に冷静さを保っているように見えて段々と恐怖や狂気が滲み出てくるポランスキーの演技に引き込まれてしまった。女装シーンなどは、本当に実生活でも女装趣味があるのではないかと思わせるほど。若い頃のイザベル・アジャーニも可愛くて良し。
peche

pecheの感想・評価

3.3
ポランスキー監督主演。
スキャンダルで逃亡中の追いつめられた当時の心境を表現した作品らしい。
現実と妄想の間で正気を失っていくトレルコフスキー。
ところどころ笑える。
イザベルアジャーニーがかわいい。
羖虺

羖虺の感想・評価

4.6
トラウマ必至。めちゃくちゃ面白い!
ポランスキー自身のトラウマによって被害妄想癖や人間不信を抱いてしまい、こんな傑作を生んでしまうなんて。しかも主演まで。
アパートという限定された舞台で次々と起こる怪奇な出来事に、不気味で独特な世界観も相まって映画に引き込まれた。
依緒

依緒の感想・評価

4.0
ポランスキーの生い立ちや、妻のシャロンテートとの辛い別れを背景に観てみると、人間不信に陥った主人公の気持ちが繋がったように思えた。
不信から妄想に変わっていく恐怖がジワジワと襲ってきて、大きな何かが起こらなくても怖さがどっしりときた。

おりしもシャロンテート事件を扱った映画を私の大好きなタランティーノ監督が撮影している。
ポランスキーはどのように感じているのだろうか。
鼻の大きい人って何かそれだけで怖いんですけど。小さかった頃見た凄い怖い夢みたい。ワケわかんない。
いかにもなんか起こりそうなのに、ずっと大した事起きないので、最後までそういう映画なのかと思いましたが、中終盤でポランスキーが風邪ひいてからのギアの上げ具合がやばいです。渋滞してた下道から、急に高速乗った。みたいなスピード感。
母親がアウシュビッツでナチスに殺され、妊娠中の奥さんがカルト教団に殺された後、こんな超人間不信映画、わざわざ自分主演で撮っちゃうんだから、もう映画に対する執念なのか狂気なのか、監督の精神状態とかちゃんと考えると具合悪くなりそうなんで、もう寝ます。昼過ぎ頃は「半分、青い」の総集編見て萌え萌えしてたんだけどなあ。。
jg

jgの感想・評価

3.8
陰キャのくせにDQNな友達とばかりつるんで、しかもそのノリに無理してる感が笑えるけど自分にも当てはまって哀愁
netfilms

netfilmsの感想・評価

4.0
 ロマン・ポランスキーほど、自らの人間不信・被害妄想癖を物語に盛り込んだ監督はいない。幼少期に第二次世界大戦を体験し、母親はアウシュビッツでドイツ軍に処刑され、父親も強制労働させられる。フランスに逃れてからも「ユダヤ人狩り」を恐れ、国を転々としながら、アメリカのヒューストンに居を構える。そのアメリカでの生活の最中、二度目の結婚で妊娠8ヶ月目だった最愛の妻シャロン・テートを、チャールズ・マンソン率いるカルト宗教信者にめった刺しの末殺される。そういう監督自身の暗い境遇が、作品の中には色濃く投影されている。『反撥』では神経質で潔癖性のヒロインが、男性不信からやがて薄暗いアパートで精神を病んで行く様子を描いた。『ローズマリーの赤ちゃん』では隣人たちによって生まれて来る赤ん坊を悪魔の子にさせられてしまうヒロインの恐怖を描いた。つまりこれは彼の中に元々あった作風が、シャロン・テート刺殺事件で更に症状が悪化したと思って間違いない。これまでは女性ヒロインだったが、主人公は男性になり、その役を自分自身が演じることである種の倒錯的な世界観を作っている。

 ポランスキー演じるトレルコフスキーという男が、名優メルヴィン・ダグラス扮する管理人に部屋を借りに行くところから物語は始まる。当時、パリ13区の中ではなかなか良い空き物件はなく、事故物件だが、なかなか良いマンションを見つける。そこで起きた事故とは、住んでいた女の飛び降り自殺だった。瀕死の重傷を負った彼女がもし亡くなれば、その家に住めるという条件が付き、彼は病院に飛び降りた女を見舞いに行く。その女の様子がある意味怖い。片目と口以外は包帯でがんじがらめにされ、突然発狂した叫び声をあげる。ほどなく彼女が死に、マンションの住人になったポランスキーだが、このマンションの隣近所に住む人間たちの異様さがどこか怖い。メルヴィン・ダグラスもシェリー・ウィンタースも、ジョー・ヴァン・フリートも一癖も二癖もある偏屈なフランス人を誇張して演じている。どんより曇った空、どこか寒々しい人々、まるでヒッチコックの『めまい』のような螺旋階段をカメラに収めるのは、ベルイマン作品で常連のスヴェン・ニクヴィストである。おどろおどろしい建物や人々、日本映画であれば、死んだ女が化けて出るシチュエーションであるが、西洋では化けて出るのではなく、同化してしまうらしい。後半のポランスキーの女装シーンは、本気の趣味なのかと疑ってしまうくらい堂々としている。前半部分では淡々としていた描写が徐々に独特のユーモアを帯び始め、主人公の妄想が振り切れて行く。
kou

kouの感想・評価

4.5
ロマン・ポランスキーらしさ、というか妄想に取りつかれた男という物語はこの監督に描かせたら間違いないという感じ。監督自身の壮絶な経験から今作も生まれたのだと思うと見方もだいぶ変わってくる。改めて色々な意味で破格の監督だと思う。今作はそんな巨匠の味が溢れる傑作だった。

あるアパートに住むことになった主人公。そこの前住人は窓から飛び降り自殺をした女性だった。次第に彼の周りでも不思議なことが起こり、陰湿な隣人たちによって彼女は飛び降りたのだと思い込んでいく。映画の一つ一つのシーンがとても不穏で、鏡を何度も写したり、遠くに見えるトイレであったり、壁に埋め込まれている物であったり、その不気味で陰湿な感じはさすが。そしてラストで加速していく。

「反撥」「ローズマリーの赤ちゃん」にも描かれる、現実と妄想の区別がつかなくなっていく描写は見事。改めてこの監督にしか描けないホラー映画だと思う。
アパートから飛びおりた主人公(ポランスキー監督自身が演じている)がフラフラと起き上がってまた飛び降りてくるシーンがヤバかった。あれってトポールの原作にもあったのだろか。ゾワッとなる。
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