【風に書かれた挫折】
今のところ私のみた、ダグラス・サーク作品(ユニヴァーサル時代の8本のみ)では、本作と『翼に賭ける命』がツートップです。
メロドラマ、くっついて離れての話ですがそれに収まらず、石油王と相容れない子供たち…油田は底なしだが家族の心は空っぽだった…という50’Sアメリカ残酷物語に広がります。
流麗なイントロが素晴らしい。フォー・エイセスのメロウな「WRITTEN ON THE WIND」に乗り、石油王の邸宅に木枯しと共に吹き込むのが、歌声に反した昏い影と…倒れる男と、女。二律背反なサーク演出、静かに冴えています。
ここで放蕩息子カイルを演じるロバート・スタック、その禍々しい千鳥足がお見事です。妹マリリー役、ドロシー・マローンの蠱惑的だが「首が座らない」歪な歩みと共に、本作のアイコン的な動作になっていますね。
スター度でいえば、カイルの腐れ縁ミッチを演じるロック・ハドソンと、彼らに巻き込まれてゆく秘書役ローレン・バコールが上でしょうが、お話を引っ張るのは明らかにカイルとマリリーですね。
これは監督も「サーク・オン・サーク」で語っていますが、暴走する人物と、観客寄りの安定した人物とで対比させるバランスなんですね。とても効いています。
実質の主役はロバート・スタックだと思います。眼差し演技がすごい。はじめからイッちゃってます。そのまま最後まで脇道を完走。この後で正義のエリオット・ネスを演じるとは思えない(笑)。
バコールに「はじめは魅了された、朝には醜く見えるはず」と言われるんですが、これは彼がリザーブした高級ホテルの部屋のことなんですが、彼自身とダブって聞こえてしまう…そんな人物。
一方、ドロシー・マローンはこの役でアカデミー助演女優賞を獲っているんですね。個人的には『翼に賭ける命』での彼女の方が巧いと思うんですが、こちらも美貌からはみ出す闇と、ちょっぴりのやるせない孤独がとてもいい。
下着姿で美脚を晒し、実は死と背中合わせのダンスシーンが強烈!
そして本作、包みとしてはハッピーエンドっぽいがまるで違うところが好きです。
問題は解決しないし、要は、物語が冒頭に巻き戻って終わっちゃうんですよね。これが嘘くさくなくて実に清々しい!(笑) 時計じかけの神が降臨しないでよかったです。
同年、『ジャイアンツ』も作られていますが、石油王ってロクなもんじゃないですね。…というか、庶民にそう思せたい何かがあるのだろうか。
ロック・ハドソンはあちらにも出演し、あちらでも石油王に悩まされる役で、ちょっと可笑しい。
それにしても、このパチモンぽい邦題で、すごく損していると思う。サーク作品はタイトル(原題)がすごくいいのに。
<2014.5.15記>