『哀れなるものたち』をB級感を増しながらも、より過激にして、
『グリグズビー・ベア』を思いっきりダークな世界観にして、
『時計じかけのオレンジ』の主人公を純真無垢なおじさんに変えたら、できましたという映画。
凄い映画。
この映画が日本では30年間、無かったことにされていたけど、それもわかる気もする。
過保護すぎる母と35歳の息子。
35歳の息子は外に一度も出たことがない。テレビも本もなく外の世界のことを本当に何も知らない。
母親は仕事や買い物のために外に出るけど、息子には絶対に外出させない。
その母と息子は毎晩セックスをしている。
主人公の息子は母以外の人をまったく知らないから、人としての常識なんてあるわけがない。
その35歳の主人公が殺人事件を起こして、そのまま、生まれてはじめて外の世界に出る。
純真無垢で、世界のことを何一つ知らない、一切の常識を持たない、母と自分以外に人間がいることも知らなかった35歳の男。
一切の常識を持たない男なのに、母親とのコミュニケーションで母親の胸を触っていたけどそれと同じことをすべての女性にやってしまうような男なのに、外に出てからのいろんな人々と交流を図れてしまう。
映画だからということもあるけど、警戒心を一切持たず、純真無垢に生きていれば、いろんな人と出会い、交流できるものだと思った。
主人公が音楽に過敏に反応する人間という設定も良かった。
ほんのちょっとずつだけど、社会人としての人間らしさを持つようになる過程も面白かった。
映画とは自分の知らない世界との出会いである…と定義するなら、この映画は最高の映画でした。
※男性器の無修正の露出があったり、35歳の息子とその母親のセックスシーン、(たぶん、本当に生きていた)猫を殺すシーンなど、人によってはかなり不快なシーンもあるので、観る場合は要注意です。