カリフォルニア州サンフェルナンド渓谷にある繁華街の無機質な夜。ハリウッドから程近いロケーション。沿岸部はポイント・デューン。ガソリンスタンド、Mobilの看板が暗闇に浮かび上がる。赤い車でやって来るマリアンナ・ヒル。するといきなり店員が闇に向かって発砲している。この最初のショットからゾクゾクする。赤いピックアップ・トラックに乗った寄り目の男。点検中の停電からジャンピング襲撃。あの店員の悲鳴が凄まじい。画家のオトンの家が落ち着かない。どこまでが絵でどこまでがインテリアなのか曖昧だ。海からやって来る“何か”は諸星大二郎やゲーム『SIREN』みたいで神話的。生贄だったのに助かる件はすべて端折るのでビビる。だから余韻が残るのかな。
あとはトムのグルーピー、ローラ(スーパーマーケット)とトニ(映画館)が殺されてしまうシーンが鮮烈。トニのロングショットで映される白いスクリーンの前で群がる住民に一斉にのしかかられる。ノワール常連俳優エリシャ・クック・Jr.のジジイ・ホワイトトラッシュ演技は全俳優の中でも随一だと思う。モーテルまでの緊張感がこの映画で一番心掴まれた。
監督はのちに脚本家として有名になるウィラード・ハイク/グロリア・カッツ。代表作は『インディー・ジョーンズ/魔球の伝説』『アメリカン・グラフティ』。