丸焼きちゃん

ブーリン家の姉妹の丸焼きちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

ブーリン家の姉妹(2008年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

テューダー朝のすったもんだはドラマとしては魅力的であると思う。絵画にも小説にも、形を変えて何度も物語として語り直されているくらいに。それがある魅力的な女が国を傾けた、そんな話ならなおさらかもしれない。

W主演のナタリー・ポートマンにスカーレット・ヨハンソン等豪華な俳優陣(ベネディクト・カンバーバッチや若い頃のエディ・レッドメインもひょっこり出演中)で演じられるのは、ヘンリー8世の世継ぎ問題をめぐるブーリン家の姉妹それぞれの運命だ。野心家で勝ち気なアン・ブーリン(姉)と清純で心やさしいメアリー・ブーリン(妹)、ふたりの姉妹の運命が重なり、もつれて、真っ二つに別れるまでが描かれている。

歴史大河は歴史そのものを描くのではなく時に誇大に、時に脚色を施して描くものだろうけれども、この作品、ちょっとアン・ブーリンが安易すぎる気がする。脇が甘い、甘すぎる。王妃まで上り詰める人物がそこまで猪突猛進お馬鹿さんか。アン・ブーリンは怒っていいと思う(?)美しく清純で大人しい妹(そもそもどちらが姉か妹か不明なようだ)との対比のためにそのような設定がされたことは察しがつくけれども、善と悪、聖女と妖女、人間を簡単に切り分けすぎだ。
メアリーもメアリーであまりに主張がないから物足りない。いろいろと都合がよすぎる人物だ。よよよと泣いているうちにすべてがすみ、彼女だけが生き残っている。(※アンを助命を嘆願はしていたし、何もしていないは言い過ぎだとは思う。でも、そこさえ話の過程において必要だった展開で、都合がよすぎると思ってしまう。)
十年くらいたってしまうと、もう昔の映画なのだと感じる。

ただ、ほんのすこしではあったけれもども、アンとメアリー姉妹の一筋縄ではいかない絆は魅力的だった。共に幼少期を過ごした仲睦まじい姉妹であったのに、家の都合に、王権の都合に、権力争いの都合によって、この作品の中の、二人の関係は歪められてしまったのかもしれない。もしもそれさえなければ。歴史はもしもの繰り返しばかりだけれども、それはささやかな人間同士の関係さえでもそうなのかもしれない。

※『エリザベス:ゴールデンエイジ』は『ブーリン家の姉妹の』のある意味続編的な世界の話かもしれない。まだ未見だけれども、こちらにも若き頃のエディ・レッドメインがちらっと出演中らしい。