このレビューはネタバレを含みます
線路を挟んで見つめ合う2人、列車が通り途切れ途切れ映る顔。死ぬシーンでは風景が映っており叫ぶ声だけが聞こえる。
イカれて泥水で固めた小麦粉を食べる学者、泣いている姉とじっとこちらを見つめる弟の幼い姉弟。
15歳の女囚は走る列車に縋り付きながら
「ぼーっとこっち見てんじゃないわよ、手を伸ばしなさいよ、助けなさいよ」と怒鳴る。
彼女はワレルカだけでなくて間違いなく私にも語りかけていた。
ラスト、イカれてしまい裸で踊る女性を映し
「よく見ろ」と言うおそらく監督の声。
こちらをとてもじっと見つめてくる映画だった。
個人間に生まれる感情なんてこの環境の中では本当に小さなものでどんどん潰されていく。
腐ったままずるずる進み続けるこの社会に轢かれる人々を激しい動とたまに挟まるうるさいくらいの静で映す。
『人間蒸発』を思い出した。
フィクションと現実が混濁する感覚。
