ブタブタ

シルバー・グローブ/銀の惑星のブタブタのレビュー・感想・評価

3.0
ある方のウルトラマンに関するツイートを読んでゲルマン『神々のたそがれ』や本作『シルバーグローブ』はウルトラマンの側から見た地球の姿なんじゃと思う。
文明は遥かに遅れており、そこに生きる人類は短命、というより時間の観念そのものが違う。
数十万年生きるウルトラマンは地球人から見れば「神」に等しい存在。
ギリシャ神話の昔から「神」と「人」が交わると大抵ろくな事が起きない。
地球人が遥か彼方の惑星の、そこに住む人間の生態系や政治、戦争、宗教、歴史に介入した事により起きる悲劇や崩壊。
本作も紛うことなきズラウスキー作品で登場人物は何言ってるのかさっぱり分からない。

本当は1977年?に完成してスターウォーズとほぼ同じ時代に公開だったのがポーランド当局の中止命令により未完の作品となる。
当時ポーランドは共産主義政権であり政府への批判も含む内容だったから文化庁の介入によりフィルムは没収され幻の映画となる(しかし国から予算貰ってこんな意味不明な映画撮ってたら当然かも知れない)
十年の時を経て俳優は歳とってしまったので再撮影も不可能で、当局によって破棄された部分はロケの映像に脚本読んでるだけみたいなナレーションかぶしただけって力技で完成。
ホドロフスキーの『DUNE』が完成してたらこんな風になってたかも?とよく言われてる。
でも宇宙飛行士達の着るスーツは最新版『DUNE』のスティルスーツより遥かにかっこいい。

原將人監督唯一の商業映画であり広末涼子初主演・デビュー作『20世紀ノスタルジア』に何か似てる。
アレも宇宙人(と名乗るキチガイ)がこの星を記録する為に撮影をしてたりする。
そしてそのフィルムを劇中で編集してたりするのでこの映画を編集してるのは劇中の人物であるとのメタ的入れ子構造だったり、更には映画そのものが外部からの介入で途中で撮影が中止されたり。
広末涼子が撮影中にブレイクして前半と後半では全然別作品みたいになってるとか、シルバーグローブも未完部分の補完はただのロケ映像だったりとか。
両方とも意味不明な電波映画だし。

シェークスピアの戯曲をそのまま舞台だけSF映画にした様な、「蜷川マクベス」方式の様でもあり後半はその衣装デザインや集団演舞、黒澤明の『乱』を更に思い切り前衛的にした様な映画にもなるし、ラストはキリストの受難て正にカオス。

ズラウスキー作品を二本続けて見た後で寝たので悪夢を見ました。
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