Tsuneno

SOMEWHEREのTsunenoのレビュー・感想・評価

SOMEWHERE(2010年製作の映画)
4.0
33歳病というものがある。
大して失敗もせず、そして大して成功もしていない男性ならば、つまり普通の男性ならば大抵がこの年齢期に妙に人生に疲れていた記憶があるんじゃないかな?
既に人生の大きな選択は済んでしまっているような気がしていて、でも自分は他の何者かになれたんじゃないかなんて後悔にも似た気持ちも心のどこかにくすぶっていて、とはいえ毎日の生活は慌ただしくも安定していて、「この生活を捨てたら、この後の人生とても大変なんだろうな」という足枷のような漠然とした心持から今の生活を捨てる踏ん切りもつかない。

「悩みがないのが悩み」なんてことを口走るお気楽な奴がいるけれども、「悩みを解決する方法は分かっているけど、それを実現するのは怖い」ということで、どんどん自家中毒に陥っていく。それが33歳病。
その昔、桑田圭祐が唄っていた「真夜中のダンディー」って曲も33歳病をテーマにしていたと聞いたことがある。

女性であるソフィア・コッポラが33歳病をテーマにして脚本を書いたとはとても思えないけれども、この映画はその"ゆるさ"や"持ってるのに退屈そうな主人公"や"なにもできない感"が蔓延していて、そのまんま33歳病映画だった。久しぶりにあの頃のことを思いだしてしまった。きっとフランシス・フォード・コッポラも33歳病にかかっていたのだろう。それもかなり深刻な。
迂闊なことにまた平日の午前中に観に来てしまったため、すぐ後ろの席に座るおばちゃん連中はスティーブン・ドーフがえっちなことをするたびに「あらやだ、おほほ」とかやっていたけど(GANTZの時よりうるさかった)、33歳病フラッシュバック中の僕にはあまり気にならなかった。むしろ余裕がなかった。

まあ、もちろん33歳病なんつーのは正式な病でもなんでもないわけなのだけれども、それでもたまにあの頃の面白おかしくも閉塞していた、閉塞してくすぶっていたけれども楽しかった日々をたまに思い出すこともある。それにしても「真夜中のダンディー」はなんてリアルな曲なんだろうか。

それとあー、33歳病に関する記載の殆どはウソなので(たとえば桑田がなんたらとか)、騙されないように。ただでさえ最近デマが多いんだから。
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