母屋と分家がそれぞれ複雑な事情を抱えて疎遠な関係になってしまった一族のなかで、それぞれの若い世代にあたる男女がそうした仲違いを解決しようと奔走する様を丁寧に描いた佳作。家族たちに名優をズラリと揃えているので安定感が半端ないし映画に重厚さをもたらす、杉村春子と対峙するポジションに浪花千栄子というのもナイスすぎる。家で重きをなし禍根を引きずる女たちに何も出来ない宮口精二と、何とか家族を元通りにしようと子供たちと協力する『警視庁物語』のキャラにも通じる心優しき神田隆も最高。

ラストはそんなところで終わるのと唖然とするが、原作自体がそうらしいのでしょうがないか。

ばあちゃんにお餅が差し出されるシーンの怖さとか、井戸に落ちて死んだ人とか、石垣を登るシーンとか、なかなかにホラーでした。
浪花千栄子、杉村春子をはじめ脇を固める名俳優たちのおもろい絡み。キャラ立ちもよかったなぁー

本作は、作品データの中には『純愛物語　草の実』というタイトルも見受けられるが。ポスターも本編タイトルも『草の実』である。先代からのお隣同士の確執から、恋愛が許されない小豆島を舞台にした『ロミオとジュリエット』。ラストに近づくにつれ、佐久間良子は首を吊なぜかるのではないかと観客に不安を抱かせる演出が巧い。ともかく杉村春子、浪花千栄子、宮口精二、神田隆と超豪華。だが、主役ふたりは名優たちに食われることなく存在感のある清潔なラブストーリーにしている。