《侍の映画》、Vol.16。『のぼうの城』。
TBS開局60周年映画。
周年映画に相応しい。TBSっぽい王道の中に番狂わせというか、権力にただ屈しないヤツ等を描く時代劇エンターテインメント。
埼玉県行田市に実際にあった忍城。
浮城とも呼ばれる。瑞々しい田畑に囲まれた城。
通称「“のぼう”の城」。
時代は戦国時代。
豊臣勢がいよいよ天下統一に大手。最後の関東勢、北条氏に迫る。
この北条方であるが、城主は豊臣側に内通し無血開城で概ね内定していた忍城。
この時に城主不在で城代になった成田長親。野村萬斎。
でくのぼうという役立たずの代名詞を“のぼう”と村のお百姓さんたちに親しみを込めて呼ばれる何とも不思議な存在。
武士の威厳なんてものはなく、血気盛んでもなく、腕もないし、どんくさいし、頼り甲斐もない。
その彼が、なぜか無血開城を反故にし、500人の手勢で20,000人で迫り来る石田三成軍と相対すことに、、、。
圧倒的な軍勢と資金という権力と武力と“顔”で落としに落としてきた豊臣軍に屈しない忍城。
これを作ったのが、彼であり、彼を慕う民であり、彼に振り回される家来達である。
「“のぼう”様が言うなら仕方ない」
“最強の人たらし”と言って良い。
そして“人たらし”どころか、その自分が好かれていることすら逆手にとる。
時には自分を犠牲にして、民を守るため、家来を守るため、大事な人を守るため。
そして、何よりも、この絶対的な豊臣勢に「戦わずに下る」ことが当たり前になりつつあったご時世の中で、彼だけがその当たり前を当たり前ではないと言って立ち向かう強さ、バカさ。
最終的に、彼が、この作品に出てくる名のある武将の数々の中でもっとも“人間らしい魂”を持つ。
豊臣勢と言えば、豊臣、石田、前田、大谷、長束など、名だたる名将揃い。
いつもはこっちの美談や雑草魂みたいな話が多いが、この映画は、こっちを敵役に描く。
結果は歴史が証明してる話なのだが、過程は出来レースではない。
そこにも譲れないものを譲れないと言い切って、無理に立ち向かって何かを貫こうとした“のぼう”。
榮倉奈々、この勝気な姫、最高だ。好き。
野村萬斎は個人的にはこのクセが好きだけど、この映画はそもそもこのクセがとてもハマってて良い。
ピエール瀧のちょい役のインパクトも素晴らしい。
芦田愛菜ちゃん、子役の才覚がただならない。
埼玉県の行田市、割と近いけど、普段は全く行き先にならない土地だけど、これ観たら途端に行きたくなる映画。