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LOOPER/ルーパーのEikeのレビュー・感想・評価

LOOPER/ルーパー(2012年製作の映画)
3.3
主演のジョセフ・ゴードン・レビット(JGL)と監督・脚本のライアン・ジョンソンとの顔合わせは2005年のジョンソン監督のデビュー作”Brick”以来。
それまでTVのコメディドラマ(3rd Rock from the Sun)でキャリアを積んでいたJGLにとってシリアスな演技を披露するチャンスをもらったと言う訳で少なからず恩義を感じるモノがあったのではないでしょうか。
そういう経緯もあってか本作ではレビット氏は製作面でもサポートする姿勢を見せております。

本作、B・ウィリスとJGLのW主演(クレジットはウィリス氏がトップ、エンドクレジットはJGLが先)。おまけにジェフ・ダニエルズにエミリー・ブラントまで出ていた訳ですから中々に充実した布陣でした。
近未来「SF」ではありますがガジェットや派手なビジュアルに頼るのではなく設定と語り口で見せる姿勢は映画ファンには嬉しい。
ですが反面少々地味だと受け取られるかもしれませんね。

主人公自身はタイムトラベルしないまま(正確に言えば主人公の「半分」は)で未来と現在の抗争に巻き込まれてしまうという設定は中々に巧妙。
このLooperという職業(?)の成りたちはユニークで独自の世界観を構築することに成功していると思いました。
タイムトラベルを扱った作品はいつの時代も人気がありますが、安易に扱うのは難しいネタであるのも事実で実際は相当作り込まないと矛盾ばかりが目について物語に入り込めなくなる危険が高くなるハードルの高いネタなのではないでしょうか。

本作でも前半はJGLとウィリス氏の意図せざる対立の構図のユニークさで大いに興味を掻き立てられるのですが(自分vs自分!)後半はトーンが大きく変化してますよね。
”レインメイカー”抹殺→未来変更のプロットはまるで「ターミネーター」+「オーメン」みたいな展開で前半とのつなぎがちょっとスムーズではないような気もしました。

うがった見方をすればやっぱり資金不足でちょっと割愛された部分があったのかもしれませんね。
事実、本当なら(オールド)ジョーはフランスへ渡る筈だったのが途中で資金が尽きて仕方なく断念。
そこに入って来たのが中国資本だった訳で舞台は急遽上海に設定変更(上海ロケの費用はあちらさん持ちだったそう)。

結果として「やっぱりタイムトラベルテーマは難しい…」という感想ですが要は「語り口」と「独自性」次第。
もう少しくだけたSFエンタティメントを期待していたのも事実なのですがこのあくまでシリアスでダークな語り口はライアン・ジョンソン氏の持ち味なのでしょう。
カリフォルニアのハイスクールを舞台にしていたBrickもかなりダークでシリアスな「ハードボイルド青春ドラマ」でしたから。

そうは言ってもオリジナルな物語と独自の世界観を構築する力量はアリとお見受けしました。
できればもう少し予算を持って一本作ってもらいたいと思っていたらその後「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」を担当したかと思えばその次に本格ミステリ「ナイブス・アウト」を発表。
このこだわりの強さは反発も呼ぶ点もあるのでしょうが没個性化が進むアメリカ映画界ですから逆に貴重な存在になる可能性も感じます。

新作は本年2022年中に007からリタイアしたD・クレイグが名探偵べノア・ブランを再演する「ナイブス・アウト2」(舞台は豪華客船らしい)、そして2024年に向けて「ナイブス・アウト3」の製作も決定済みらしい。
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