りっく

LOOPER/ルーパーのりっくのレビュー・感想・評価

LOOPER/ルーパー(2012年製作の映画)
4.2
「タイムトラベルSFもの」には、その特殊な設定のルール説明が必要だ。
だが、本作は冒頭で主人公の口から台詞で説明された後は、極力「画」で世界観を見せていく。
その映画的な語り口が非常に効果的だ。
それでいて、ルールの細かい整合性に縛られない大胆さや、SFというジャンルに縛られず、「人間」の深い部分に迫ろうとするアプローチの斬新さがある。
だからこそ、本作はとてつもなく面白い。

秀逸なのは「ルーパー」と呼ばれる人間たちの日常描写だ。
惰性で行う機械的な殺人と、無感動で味気ない日常の循環。
そして、トリップ感覚を味わえる恍惚かつ艶めかしい画作り。
安易にカメラを揺らそうとせず、アングルの不安定さで世界観を構築していく。
空虚で息苦しい閉塞感を体験させるからこそ、そんな負のループを断ち切ろうとする主人公の咄嗟の決断に感動してしまう。

「肉体の痛み」を感じさせる描写も巧みだ。
拷問場面は直接的に描いてはいないが、観客が思わず想像してしまう見事な仕掛け。
それでいて、その後オールド・ジョーがリトル・ジョーに居場所を伝える場面に恐怖を与える効果も果たしている。
ライアン・ジョンソンは観客の想像力を喚起させるための、情報の出し入れに長けている。
そんな気の利いたストーリーテリング力に、ひたすら魅せられてしまった。
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