けーはち

砂漠でサーモン・フィッシングのけーはちのレビュー・感想・評価

3.2
砂漠の国イエメンに鮭を導入し、鮭釣りが出来るように──無謀なプロジェクトを国家が後押し。水産学者はその主導をせざるを得なくなる。うんざりしながらも彼は仕事のパートナーの魅力的な女性と、依頼主であるカリスマ的な中東の富豪に惹かれ、のめり込んで行く。人情劇の名手ハルストレム監督、カッコ良さげでも何か翳りのあるユアン・マクレガーとシゴデキ女エミリー・ブラントの組み合わせは魅力的。集票しか頭にない政府に役所の阿諛追従体質、大衆紙の煽りとシニカルな冷笑に満ちた空気の中でも、大願成就を信じ傾注すれば一念岩をも通す。決して資本主義的・即物的な金儲けだけでなく誰かのため何かを信じて一所懸命行う、それが仕事の本質で、それを共有するパートナーとの絆により「中年の危機」も脱するのだと寓話的に説く。原作者が敵対的買収で会社を失った元経営者で、引退後小説を書いた遅咲きの作家であるその心境が色濃く滲む。いささか中東の信仰に幻想を抱きすぎ、またそれを自分の仕事の理想に我田引水しすぎであるが。