あつぼう

パフューム ある人殺しの物語のあつぼうのレビュー・感想・評価

3.8
もう最初から最後まで圧倒させられた映画でした。
悪臭立ち込めるパリの市場での出産シーンからして監督の仕掛けた地雷を踏んでしまってような衝撃でした。あんな魚だらけで悪臭のする市場でゴミ同然に産み落とされたグルヌイユ。
産まれてすぐに開花した彼の匂いに対する才能のおかげで命は救われるのですが、待っていたのは奴隷のような生活。こんな中では善悪の区別もつくわけもないです。

たぶん世界で一番素晴らしい嗅覚を持ってるグルヌイユ。この映画で描かれてた嗅覚なら犬よりも上ですね。
香水の原料などを言い当てる便利な鼻でもあるのですが、どんなものでも匂いでしか判断出来ないようになってしまいます。何かに執着し追い続ける事は、周りが見えなくなる可能性があるんですよね。グルヌイユが究極の香水を作るためにおこなった行為は、グルヌイユ本人は何も悪い事をしたって思ってないでしょう。「彼女が必要だった」って言葉が全てでした。

匂いって映像では伝わってこないけど、この映画は匂いが見えるような気がしました。
実際に匂ってくるわけはないんですが、監督の手腕なのか匂いを想像してしまうんですよ。
これって映画館で観てる時に、映画と同じように匂いがするような仕掛けがあればいいのにって思った。
でもあの市場の匂いの再現だけは勘弁してほしいけどね。

ベン・ウィショーって初めて観たけど強烈なインパクトを残しますね。
人を殺す時って機械のような表情で淡々と行動するのが恐いですよ。
あまりにも強烈なキャラやから嫌いな人もいてるやろうけど、また違った映画でも観てみたいって思いました。ダスティン・ホフマンやアラン・リックマンなど名優が脇を固めるキャストは素晴らしかったです。
あつぼう

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