都部

映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館(ミュージアム)の都部のレビュー・感想・評価

4.2
滅茶苦茶面白かった。
フーダニット&ホワイダニットを兼ねた特殊条件ミステリの鮮やかな展開と多種多様なひみつ道具の作劇上の配置そしてドラえもんとのび太の関係性の妙を改めて定義する物語としてどの要素にも不足がない。ゲストキャラクターの個性も充実しており、主題歌もピッタリとほぼ完璧。

『ドラえもん』という作品が形作る世界観の妙であるひみつ道具を主軸に取り上げるという発想は、TVアニメ版の日常的なエピソードからの物語の拡張として正しく、日常と非日常が地続きにあるドラえもんの映画として適切なテーマのように思える。ひみつ道具博物館で次々に取り上げられるひみつ道具の数々は断片的な登場にも関わらずもその面白味を引き出していると言えるし、後々の事態収拾の手段として用いられたりDXの犯行に応用されるという布石の張り方が極めて巧みだ。

子供向け/大人向けの垣根を越えるセンス・オブ・ワンダーの描写として印象的であるし、未来の道具がもたらす 童心の夢を叶えていくような高揚感が全編通してあるのも嬉しい。対してゲストキャラクターのクルトの駆け出しのひみつ道具開発者としての苦悩や葛藤も語られ、そこで紹介される失敗であるかのように思える道具の数々への肯定が、のび太という主人公の正面からの肯定に反映される構成はとても綺麗で感動的だ。

盗まれた鈴に纏わるエピソードもあざとすぎなくて、よくあるような話だからこそドラえもんが目にしたのび太の人柄が際立っているし、それを受けての余計な修飾を伴わない正面からの賛辞が見ているコチラの気持ちに暖かみを与えるものとしてあるのがいいぜ……。

そうした諸々の過程を経ての、ラストのドラえもんとのび太の掛け合いは最高の一言であり、物語を通して二人の関係性の結び付きを鮮やかに補強する本作は素晴らしいという他ない。
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