Ricola

教授とわたし、そして映画のRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

教授とわたし、そして映画(2010年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ホン・サンス監督のセンスにまた脱帽するばかりで、ずっと楽しく観ることができた。
青のバックにハングルで何か書いてあり、威風堂々が流れる挿入場面から美しい。

相変わらず、あまりカメラは動かない。動くときはロングショットかミディアムショットからクロースショットへと、カメラがぐっと近づく演出が多い。


この作品は四部からなっている。
ちゃんとそれぞれ結びつきがあるが、一部ごとで整理をしながら、じっくりと考えて観ることを促すようである。

まずは「呪文を唱える日」。
呪文を唱えたくなるくらい、ついてない日だって人生にはやはりある。
宴会のシーンにて、ぐっとカメラが寄って、2人だけをクロースショットでおさめるショット。
ソン教授とジングの一騎打ちかのようである。
ジングは自分の事情、そして過去の反復を恐れるようにソン教授にしつこく聞きまくる。
それから、自分の映画の上映会にて作品の説明をするジング。
ある人を一旦判断しても、別の日にその同じ人に会えば違う側面が見えてくるのだと彼は言う。
これはジングが作った映画だけじゃなくて、この『教授とわたし、そして映画』という作品自体のテーマなのではないかと思わされる。
そしてここで、教授に自分がしたことが跳ね返ってくることで、ジングとソン教授の闘いは教授が優勢であることがわかる。

「キング・オブ・キス」
ジングの学生時代へと遡る。
その当時彼が夢中なオッキという同じ学部の学生。
実は教授と彼女はただならぬ関係だったけれど、彼は何とか彼女と恋人らしい関係にたどり着く。

「大雪の後に」
関係を整理するかのように、3人の距離感が微妙な塩梅で揺れ動いている様子が描かれる。
大雪の影響でソン教授の授業にやっと来たのはオッキとジングだけ。
そこで教授が「愛する人はいるか」などという質問などを二人に投げかけて、少々ハラハラする。
ここでも「闘った」二人であったがお互いに食べたものが消化不良であった。
つかえていたものを吐くというのは、それは実際に喉につかえていただけではなく、討論によって心につっかかったものも吐いたのであった。

「オッキの映画」
同じ場所に違う二人の男と行くオッキ。
その違いと共通点を、交互に映すことでわかりやすく提示している。

「裏切りが怖い」という若い男のジングと、「死ぬのが怖い」と言うオッキ。
もうここで、ジングがソン教授に負けたということがよくわかる。

人生は反復である。そのなかに差異はあれども。
この経験をほぼそのままオッキの卒業制作に落とし込んだというが、彼女はここから大きなことを学んだに違いない。
Ricola

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