【もしもハリー・ポッターが魔法をなくしたら】
新生ハマー作品という興味から行きました。
ラドクリフ君にはあまり興味ないのですが、魔法を使えぬハリポタの無力感、という前提が自然と醸されてしまうので、そこは彼の活かし方として巧いと思った。
王道ゴシックがかえって新鮮な、丁寧な画づくりと、潮の満ち引きで孤島に変わる幽霊屋敷、という舞台設定がとてもよかったので、眼は満足しました。
でも、お話がねー。ゴーストストーリーなのにまったく怖くないです。脅かしはあるけど、こけおどしですね。で、物語がなかなか進まずに、こけおどしの「現象」ばかりが延々と続くので、そのうち飽きてきます。
ハマーだしね、と途中で興味を映像見惚れに絞り、乗り切りましたが(笑)。
タイトルに反して白のイメージで始まり、ウーマン・イン・ホワイトも登場。これは後に出るブラックと対比させるための伏線、とわかってきますが、それが実際どんな白と黒なのか、その間にどんな諧調があるかを描かずに、脅かし描写ばかりに費やすから、物語として膨らまず、ほぼ面白くないです。
作品内の超現実ルールが曖昧になり、だからオチもふーんとしか思えない。しょせん現実逃避なのに、ハッピーエンドとも見えるようにしたがるのは、キリスト教圏の悪い癖だと思います(笑)。原作者にも不評だったようですね。
一か所惹かれたのは、主人公を「影に引かれるな」と助ける裕福な男ですが、主人公が彼に、霊現象を信じないのは、現実主義ではなく願望からでないか?と問いかける所が面白い。英国人の精神的背景としてはこの時代まだまだ、幽霊上等な面があったようですね。降霊会なんて普通にやってたようだし。
本作でも、コナン・ドイルが霊を認めた、みたいな新聞記事が出てきます。霊を信じない方を異端とする、人の怖さはすこし出ていたとは思いますね。
同じ新生ハマー作品でも、『モールス』はかなり面白かったんだけどなあ。本作の原作は未読ですが、映像化が難しい内容だったんだろうか?
ロジャー・コーマンがやったように、同じ舞台で違う物語を作ってほしいな。これだけ魅力的な場所なのに、これだと勿体ないなと思ってしまいました。
<2012.12.2記>