ふじこ

最初の人間のふじこのネタバレレビュー・内容・結末

最初の人間(2011年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

カミュについては[異邦人]のあらすじくらいしか知らず、アルジェリアについては何一つ知らない。
なのでフランスとの関係性も、多民族が同居する街での関係性も分からない。
そんなレベルで視聴したけれども、面白かった。

何一つ思い出と呼べる記憶のない父への思いやルーツ、すっかり老いてしまった母や、変わってしまった街。そして薄っすら感じる戦争の影。
有名な作家となって故郷に凱旋したジャック・コルムリと、その過去の生活を交互に描く。
ひたすら厳しく、体罰をするけれどどこか実直さのある祖母、まだ若く美しい母、学がないけれど陽気で人の良い叔父。
貧しいながらも、自分を気にかけてくれる恩師や日々成長するジャック自身の精神、美しい地中海の風景や空気感がとても良かった。

一つ謎だったのは少年時代のジャックに酷い言い掛かりで暴力を奮ってきた孤高の少年(アラブ人?人種が違う)。彼とは最後まで打ち解ける事はなかったのだけれど、長じたジャックは再会の際に"尊敬していた"と言う。相手は全くそんな事は思っていなかったそうだけれど、有名になったジャックの力で政治犯として死刑を求刑され投獄されている息子を助けて欲しいと願う。
わたしの共感力の問題なのか、仮に彼の孤高さ(学校でも孤立しているようだった)を尊敬したとして、歩み寄っては殴られもしたのに大人になってから逢いに行き、彼の望みを叶えようとする。
そんな義理があるようにも思えないし、政治には関わらないようにするスタンスを貫いていたように思えるのだけれど…。ジャックの考えは非暴力によるアルジェリアの独立だけじゃなかったっけ。この辺情勢が分からない故に う~ん?となってしまった。もったいない。

フランス領アルジェリアとして、"フランス人"が誹りであるように使われているけれどその関係性とかちゃんと理解出来ていればもっと良い映画だったのかな~。
"故郷"と言えば地元の事だし、"祖国"と言う言葉は余りにも馴染みがない。望郷にも似た感情なんだろうか。"ルーツ"も余り気にしない人間からすると大切な事なのだろうけど、余りに多くを抱えるのだなぁと思った。
でもそれがあったら、老いた母親の気持ちや最後のシーンの意味深感も理解出来たかな~。いつかまた観てみたい。
ふじこ

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