都部

劇場版 HUNTER×HUNTER 緋色の幻影(ファントムルージュ)の都部のレビュー・感想・評価

1.7
原作の要素や台詞を掻い摘む形で『原作っぽさ』の再現性を上げようとする作りは劇場版として堅実ながら話としての面白味がなく、またそのオリジナリティの欠落から印象としては原作エピソードの粗末な再放送のように映るのは否めない。

当時の予告や広告を目にすると、ヒソカの入団以前に幻影旅団の4の数字を冠していたオモカゲとの対立からクラピカの過去を掘り下げていく物語のようだがそれは予告制作班の陰による工作でしかなく、鑑賞による凝を通すと見えてくるのはキメラアント編でキルアが直面する精神的な問題の葛藤と克服である。

前述した再放送とは、この強敵を前にしてゴンを見捨てる判断を取るキルアという構図のことであり、自責の念に駆られて逃避する姿こそ異なるものの本作で提示される短絡的な解決法を目にするとファンとしては頷き難い物を感じる。またイルミ/念によるイルミ人形が揺さぶりとして唱える『暗殺者の末裔だからいずれ友人を殺したくなる』というものは、原作のその点を読み込みきれていない浅慮な解釈による流れでやはりそうした細かな違和が呑み込みを邪魔する。

公開当時 ヨークシンシティ編をアニメで放送していた事情から、幻影旅団が登場するのは理解できるがクラピカとの遭遇をあっさりと流してしまう判断は納得しにくいものがあるし、元幻影旅団であるオモカゲとクラピカの因縁は主軸としてではなく副次的な物として処理される流れは作品としての売りを誤っている印象を受けた。

ジャンプ映画の評価の平均値は測りかねるが、原作の既存の要素を工夫なく拾ったことで却って違和感が悪目立ちする作りは賢いとはいえず、さして意外性もないという点がメディアミックスによる劇場映像作品としての価値を大きく下げていると言えるだろう。
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